現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は近年、アミロイドーシス変異アポA-Iの凝集・線維化反応における2ケ所の高凝集性領域(14-22及び53-58残基)の役割を明らかにしてきた(JBC 294, 13515, 2019)。本研究では、3番目の高凝集性領域である67-72残基付近に位置する3つのアミロイドーシス変異Δ60-71/VerThe insertion、Δ70-72、F71Yに着目して速度論的並びに熱力学的な解析を進め、Δ60-71/VerThe insertion変異が新たな高凝集性領域を形成することで線維核形成をエントロピー的に促進していることを明らかにした(Sci. Rep. 13, 18514, 2023)。一方、パーキンソン病αシヌクレインでは、N末-C末間分子内相互作用によるαシヌクレインの凝集制御機構におけるSer87残基の関与を世界で初めて明らかにすることができた(Sci. Rep. 13, 10885, 2023)。アミロイド前駆タンパク質の凝集・線維化過程におけるタンパク質分子間並びに分子内相互作用の重要性を、速度論並びに熱力学的な観点から明らかにした重要な知見であると考える。 また、アミロイド共存タンパク質を標的とした新規特異抗体の開発に関して、アポE4アイソフォームに特異的なアミノ酸配列を認識する抗アポE4特異的モノクローナル抗体を新たに開発し、アポEアイソフォームを高感度で識別・検出可能なSandwich ELISA系の構築に成功した(FEBS Lett. in press.)。 以上のように、研究成果を3報の論文に公表するなど、当初の研究計画に対しておおむね順調に進展している。
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