本研究では糖との反応前後で蛍光特性が変化する新規糖鎖誘導体化試薬MPPPの開発を行っている.エキシマー蛍光を利用することで過剰に存在する未反応の試薬を除去することなく,目的の反応生成物を検出することが可能になると考えられる.これまでの検討により開発した一連の化合物はGalNAcやGal-GalNAcなどの糖単体は感度良く検出することが可能であった.今年度は,これまでに開発した化合物の中から蛍光応答性及び溶解性が比較的良好だったnoPhを使って,fetuinをモデル糖タンパク質として糖鎖の検出を試みた.PMPを用いた既知の反応条件ではDMSOをco-solventとして用いることでピークの減少が確認された.PMPは糖鎖の遊離と標識化を同時に行う者であるが,DMSOを使用することで標識化は可能であったものの,糖鎖遊離効率が低下すると考えられた.本化合物はDMSOにしか溶解しないため,既存の反応条件を流用することは難しい.化合物を溶解させるために低極性溶媒―相関移動触媒を用いるなど,さらなる工夫が必要である. 今年度はnoPhに焦点を当てて検討を進めたが,その他にもNMeやCOOH,Oリンカー等の化合物を開発している.引き続き,これらを用いた検討を進め,O糖鎖分析法の確率を目指す.
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