研究課題/領域番号 |
22K06561
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒田 直敬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (50234612)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分子インプリントポリマー / プラスチック抗体 / 化学発光 / キノン / アスパルテーム |
研究実績の概要 |
抗体の分子認識能を利用した酵素免疫測定法は、薬毒物検査や臨床検査など幅広く用いられている。しかし、抗体の作製には高度な技術が必要であることや安定性が低く、取り扱いが難しいといった問題点がある。本研究では、抗体や酵素といったタンパク質に代わり、分子認識能とシグナル発生能力を併せ持つ機能性ポリマー(プラスチック抗体)を作製し、免疫測定法への導入を目指す。 このための手段として、従来よりも精密な分子認識が可能な分子インプリントポリマー (MIP) の作製と、安定なシグナル発生を可能とする化学発光性ポリマーの作製とを組み合わせた新たな免疫測定法のためのツールの開発を目指す。 本年度は、前年度に合成したキノン構造を有するメタクリル酸誘導体 APMA-NQ をモノマーとして MIP 及び比較対照となる非インプリントポリマー (NIP) を合成した。このとき、鋳型分子としては合成甘味料であるアスパルテームを選択した。合成した MIP 及び NIP について、ルミノール及び還元剤 DTT を添加してから生じる化学発光を観察したところ、MIP 及び NIP の両方で強い発光が観察された。したがって、キノン構造を有するポリマーはモノマーである APMA-NQと同様の反応により化学発光性を示すことが確認できた。次に、MIP 及び NIP について鋳型として用いたアスパルテームと混合してから限外ろ過後、同様にルミノール及び DTT を添加後に生じる化学発光を観察した。その結果、NIP についてはアスパルテームの有無により発光強度に変化が見られなかった一方で、MIP についてはアスパルテームの存在下で発光強度の減少が見られた。この発光強度の減少の原因として、MIP がアスパルテームを認識して取り込み、これにより MIP のキノン部位とルミノール及び DTT との反応が阻害されたことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キノン構造を有するモノマーが重合して形成されたポリマーであってもキノンの活性酸素発生能が維持されており、化学発光応答性を示すことが確認された。また、鋳型分子の共存下で重合させた MIP のみが鋳型分子と相互作用して化学発光強度が変化するという期待通りの結果が得られ、MIPが鋳型分子を化学発光測定するための手段として利用できる可能性が高まった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はリボフラビン等他の化合物を鋳型分子とする MIP を合成するとともに、その鋳型分子認識機構についてより詳細な調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験において、研究室に現有の装置と試薬を用いての検討が可能であったため。残額は新たな MIP 材料の購入に充てる予定である。
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