研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに作成したプログラムを、ハロゲン結合の形成が確認されているタンパク質-リガンド複合体構造に適用し、リガンド結合部位のハロゲン結合形成可能領域を予測できるか検証した。検証には、2004年にAuffingerらにより報告された、ハロゲン結合を含むタンパク質-リガンド複合体構造のデータセットを用いた(PNAS USA, 2004, 101, 16789-16794)。データセット中のタンパク質主鎖のカルボニル酸素原子とハロベンゼン構造を含むリガンドのハロゲン原子との間で形成される、68個のハロゲン結合を検証に用いた。タンパク質主鎖のモデル分子としてN-メチルアセトアミドを用い、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼンの三種類のプローブ分子を用いて、量子化学計算レベルの分子相互作用場(MIF)計算をそれぞれ実施した。続いて、算出した三種類のMIFそれぞれについて、昨年度作成したプログラムを用いて近似関数を求めた。さらに、求めた近似関数と昨年度作成したマッピングプログラムを用いて、データセット中のタンパク質リガンド結合部位に存在するリガンドのハロゲン原子上のMIFを算出した。その結果、データセットで観察された68個のハロゲン結合のうち64個に関して、リガンドのハロゲン原子がハロゲン結合形成可能領域に含まれることが確認できた。残る4個のハロゲン結合は、ハロゲン結合形成可能領域の境界付近で形成される非常に弱いハロゲン結合であることが示唆された。以上の結果より、本研究において考案したMIF計算法は、タンパク質主鎖のカルボニル酸素とハロベンゼン構造を含むリガンドの間で形成されるハロゲン結合を適切に記述できることが示された。
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