研究課題/領域番号 |
22K06564
|
研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
唐澤 悟 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (80315100)
|
研究分担者 |
梅野 智大 昭和薬科大学, 薬学部, 特任助教 (40879524)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 発光プローブ / 金属イオン検出 / 生体イメージング / 光ラセミ化 / らせん / ピリダジン / ヘリセン / 光異性化 |
研究実績の概要 |
我々は電子供与性基と電子求引性基を有するプッシュプル型二環式アミノキノリン誘導体を用いて、様々な刺激に応答する発光現象を見出してきた。今回二環式からπ拡張して得られた3つのプッシュプル型多環式発光分子(①イミダゾナフチリジン、②アンチリジン、③アザペンタヘリセン)について蛍光特性を明らかとし、分析試薬や生体イメージング剤としての可能性について検討を行った。 ①:ブレンステッド酸である金属アクア錯体を認識可能なイミダゾナフチリジン骨格を有するTurn-ON型蛍光分子INAの開発を行った。INAは特定のpHでのみ蛍光強度が増大することが明らかとなり、二価と三価の酸性度の違いを利用し、三価のみ検出する発光プローブの開発を目指した。その結果、三価金属イオンのみに特徴的に蛍光強度増大を見出した。また、三価アルミニウムイオンについては、有機溶媒中で錯体が生成し、X線結晶解析によって分子構造を明らかとした。大変興味深いことに、アルミニウムを核とした外圏錯体であった。これらの成果はChemical Communicationsへ投稿し受理された。 ②:三環式アンチリジン誘導体は水への溶解性が高く発光することから、生体蛍光イメージングプローブとしての可能性を持つ。アンチリジンの開発を進めていく段階で、溶液中で不安定であることが明らかとなり、分子骨格のチューニングを進めている。 ③:アミノキノリン誘導体を二量化して得られるピリダジン含有アザペンタヘリセン誘導体の開発を行っている。ピリダジンは光照射によってラジカルが発生することが知られており、それに伴い蛍光特性が変化することが予想される。現状、このような光異性化を含む現象や特徴的な構造変化に加え、光ラセミ化について成果をまとめた。一般紙への論文投稿を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は三つのサブテーマで進めている。1年間の研究期間中にサブテーマ①(イミダゾナフチリジンによる金属イオン検出を目指した発光プローブ開発)については、研究成果が論文へ掲載された。また、サブテーマ③(ピリダジン含有アザヘリセンによる光学特性)については、ピリダジンへの光照射に基づく可逆的な三重項ラジカルが確認され、また特徴的な蛍光特性も明らかとなった。さらに光学活性体の光ラセミ化について詳細に検討を行い、これらの成果をまとめたため、論文へ投稿中である。②については進捗が遅れているが、全体的に当初の計画を上回る進展が出来ている。
|
今後の研究の推進方策 |
②のアンチリジン型発光プローブ開発については、当初の計画よりも遅れている。その原因が電子不足なアンチリジン骨格の不安定性に起因していることから、アンチリジンと同様な三環式でかつピリジンが一つ少ないピリドキノリン骨格で計画の水溶性の高い生体蛍光プローブ開発を進める予定としている。 ①については、論文が受理され一つの区切りはついた。目標としていた三価金属イオンのみ選択的に検出可能なプローブが開発できた。次のステップとして、三価金属イオンの中で鉄イオンのみ検出可能なプローブ開発を目指していく予定である。 ③についても論文投稿中であり、区切りはついている。さらに本研究を進めていくうえで、新たに分子の電子状態によってラジカル発生の程度が異なることが分かった。したがって次のステップとして、ラジカル発生をキーワードとし、活性酸素種などラジカル種と高い反応性を有するプローブ開発へ展開させたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定していた蛍光プローブ開発のための試薬が(ナフチリジン型蛍光プローブ)、追加実験なく論文受理されたため使用せずに済んだことによって残金が生じた。 2023年度、進捗遅れている②のテーマ(アンチリジン型蛍光プローブ)開発のための試薬購入費として使用する予定である。
|