現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、第一世代の亜鉛MRIプローブとして、ACLE(7-amino-3-chloromethyl-3-cephem-4-carboxylic acid p-methoxybenzyl ester)塩酸塩、bis(pyridin-2-ylmethyl)glycine、ならびに2,6-difluorophenolより調製可能なDpa-SoxLdiFの設計・合成を行った。続いて19F-NMRでの評価により、1) Dpa-SoxLdiFが期待通りに触媒量の亜鉛と完全に反応して2,6-difluorophenolを放出し、この反応は19F-MRIにて十分追跡可能であること、2) 細胞内環境を模倣したグルタチオン存在下での還元的環境においても多少の阻害はみられるものの、亜鉛によるDpa-SoxLdiFからの2,6-difluorophenolの放出は進行すること、3) 種々の二価金属イオン(Mg, Ca, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Cd)との比較を行ったところ亜鉛以外(Co, Cu, Cd)にも応答性が確認されたが、生体内でこれら金属は亜鉛に比べて微量であるため他金属イオンでのプローブの応答による干渉は弱いものであること、さらには、より細胞内環境に近いグルタチオン存在下ではこれら亜鉛以外の二価金属イオンによる応答性は減弱した一方、亜鉛は比較的グルタチオンによる影響を受けにくくDpa-SoxLdiFとの選択的応答性が見られること、等を明らかにした。以上、細胞内遊離亜鉛のMRI検出にむけて期待が持てる結果が得られたことより、19F-MRIでの亜鉛検出を目指した基礎的な検討を行うこととしたが、MRI測定を予定していた大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの共同研究者が退職し、欠員補充が行われない中で測定自体を行うことができない状態となった。他の研究者にも問い合わせを行ったものの装置の性能が大阪大の当該機器と比べて大きく下がることもあり、現状MRI評価は進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
プローブとしての性能の向上を図るべく、亜鉛認識部位であるDpa部位の変換を行うことによって、亜鉛への親和性を調節するとともに亜鉛錯体上の配位水の求核性を向上させて2,6-difluorophenolの放出を加速させる設計を施す。この際に、Dpa-SoxLdiFとは異なりセフェム骨格を持たない単純化した発蛍光性のモデル化合物を利用して合成・評価の迅速化を図る。さらに、脱離能の変化によるプローブの応答速度の向上を目指して脱離基部位でのエーテルからチオエーテルへの変換も試みる。なお、以上の検討によってDpa-SoxLdiFを最適化したプローブは4位カルボキシ基に由来する水溶性のために細胞膜透過性をもたないことが予想される。そこで、このカルボキシ基を変換して細胞膜透過性を付与した上で細胞内遊離亜鉛のMRイメージングを目指す。 並行して、抜本的な19F-MRIプローブの感度向上を目指して等価な19F核を1,000万個のオーダーで1粒子中に有するperfluorocarbon封入コアシェル型ナノ粒子を活用するべく、ガドリニウム錯体とナノ粒子との間の共有結合が亜鉛との反応により開裂してガドリニウムによる常磁性緩和促進効果が解消され、19F-MRシグナルがoffからonへと変化するように設計・合成したプローブへの展開も試みる。
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