研究実績の概要 |
ビタミンK類は抗がん活性を有することが知られており、その作用機序はミトコンドリアに局在するNADH-キノン酸化還元酵素との反応でスーパーオキシドラジカルを生成することだと考えられている。本研究は、ビタミンK類のがん治療への利用を目指し、ビタミンK誘導体と、MRI造影効果を併せ持つレドックスプローブ(ニトロキシルラジカル)を結合させた新規抗がん剤の作製を目指している。 研究代表者はこれまでに、ビタミンK3(メナジオン)の腫瘍細胞に対する毒性効果を6員環のニトロキシラジカルであるTEMPOLが増強すること、TEMPOLと同じ骨格である2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinolでは毒性増強効果がないこと、5員環のニトロキシラジカル類ではその効果が弱いことなどを示してきた。本年度はこれまでの成果を踏まえて、単純な構造として6員環のニトロキシルラジカルとビタミンK3を直接結合させた新規化合物の合成を行った。NMR等による検討から、化合物の合成は成功したことを確認したが、ビタミンK3と比較しての毒性増強効果は得られなかった。このことから、リポソーム化にあたって、ニトロキシルラジカルを多量に封入する方策が必要であること、目的を達成するにはビタミンK3とニトロキシルラジカルの比率や量薬剤の細胞内での局在などについてより詳細に検討する必要があることが判明し、今後の研究の方向性を定める上で重要な情報を得ることが出来た。 また、研究結果に関連して、日本薬学会第144年会などいくつかの学会でポスター発表を行った。
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