研究課題/領域番号 |
22K06574
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
楠 英樹 国立感染症研究所, 次世代生物学的製剤研究センター, 室長 (90334060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Bcl-xL / B型肝炎ウイルス / HBx / 多量体化 |
研究実績の概要 |
本研究では、HBxとBcl-xLが相互作用すると、Bcl-xLの多量体化を誘導し、Bcl-xL多量体がCa2+チャネルとして機能し、HBV複製を引き起こす可能性について検討することを目的としている。Bcl-xLの多量体の検出には、主に核磁気共鳴(NMR)法を用いている。本年度は、HBx BH3領域蛋白質に関して、大腸菌発現系を用いてワイルドタイプと数種の変異体の調製に成功した。Bcl-xLは既に調製方法を確立しており、必要に応じてBcl-xL蛋白質の精製を実施した。NMR解析を容易にするため、15Nで安定同位体標識したBcl-xLの調製を行った。また、膜模倣環境下でHBx BH3領域蛋白質(ワイルドタイプ)がBcl-xLに結合するとBcl-xLが多量体化すること、多量体化したBcl-xLに、結合親和性の高いリガンドを添加するとモノマーに戻り、そのリガンドと結合していることをNMR解析で確認した。今後は、この方法を用いて、さらに良いBcl-xL多量体化を阻害する低分子化合物を探索する予定である。 Bcl-xL多量体化が、Bcl-xLとリガンドの結合親和性に関連するかを明らかにするため、等温滴定カロリーメトリー(ITC)解析でその結合親和性を調べた。数種のHBx BH3領域変異体とBcl-xLの結合親和性を決定することができた。その結果、HBx BH3領域変異体の中に、ワイルドタイプより強くBcl-xLと結合するタイプ、弱く結合するタイプ、ほぼ同じ結合親和性を示すタイプがあることが分かった。現在、結合親和性とBcl-xL多量体の関連性を調べている。また、HBx BH3領域変異体を用いて、Bcl-xLの多量体を誘導する上で必須となるアミノ酸を同定しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HBx全長の調製を現在も検討しているため、「やや遅れている」とした。一方で、Bcl-xLと相互作用するHBx BH3領域蛋白質とその変異体を概ね調製することができた。今後もHBx全長の調製を検討していくと共に、既に調製できているHBx BH3領域蛋白質とその変異体を用いて、Bcl-xL多量体化メカニズムを明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに進めていく予定である。Bcl-xL多量体化に、HBx BH3領域のどのアミノ酸が必須であるかを調べる。また、HBx/Bcl-xL相互作用によるBcl-xLのCa2+チャネル機能とHBV複製の解析を行う。
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