研究課題/領域番号 |
22K06576
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
内田 雅士 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (90824574)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血管平滑筋細胞 / 翻訳開始因子 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自の血管平滑筋細胞(SMC)の3次元培養系を活用し、「eIF4B、4Gの発現制御がSMCのフェノタイプ調節に伴う増殖亢進に寄与するか」を明らかとすることを目的とする。本研究で用いるヒトSMCは初代培養細胞であるためロットによってタンパク発現量等にばらつきがある。そこで今年度はまず複数ロットのヒトSMCを用いてeIF4Bと4Gのプレート、ハニカム3次元培養におけるmRNA、タンパク発現を確認した。その結果、プレート培養と比較してハニカム培養でタンパクレベルの減少が顕著であること、一方でmRNA減少は比較的緩やかであることを確認した。よってこれらの現象がロットによらず共通の現象である可能性が高いことを確認できた。 次にプレート培養ヒトSMCにおいて、eIF4B、4Gの各々のノックダウン、およびダブルノックダウンを行い、増殖への寄与を解析した。その結果、各ノックダウン群で増殖抑制の傾向があることを見出した。また、本研究ではeIF4B、4Gの一過性過剰発現や、eIF4B、4GのmRNA 5’-非翻訳領域とGFPのキメラ遺伝子をプラスミドを用いてヒトSMCに導入する予定である。そこでまずプレート培養によるプラスミド導入条件の検討を行った。その結果、トランスフェクションの効率が不十分である可能性が示された。さらにプレート、ハニカム培養におけるリボソームのモノソーム、ポリソームの分布を確認した。その結果、ハニカム培養ではプレート培養よりモノソームがやや多く翻訳が抑制傾向にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数ロットのヒトSMCを用いてプレート培養、ハニカム培養におけるeIF4B、4Gのタンパク、mRNA量の変化がロットによらず共通の現象である可能性が高いことを確認できた。また、プレート培養におけるeIF4B、4Gの増殖への寄与の可能性を示した。ただし単一ロットの結果であるため複数ロットでの再現性の確認が必要であると考える。また、プレート、ハニカム培養におけるリボソームのモノソーム、ポリソームの分布の確認もできた。 一方で、プラスミドの導入効率が不十分である点は初代培養細胞を用いているため予想の範囲内である。これに関しては今後、条件の最適化が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
プラスミドの導入効率を上昇させる条件を最適化したうえでハニカム培養ヒトSMCにeIF4B、4Gを過剰発現し、蛋白合成、増殖の変化を解析する。また、eIF4B、4GのmRNA 5’-非翻訳領域とGFPのキメラ遺伝子をハニカム、プレート培養ヒトSMCに導入し、GFP蛋白発現を比較する。これによりeIF4B、4Gの発現調節が翻訳レベルで行われているか明らかにする。またeIF4B、4Gをノックダウンしたプレート培養SMCに対し同じ実験を行い、eIF4B、4Gの発現が自身の翻訳効率に影響するか検討する。さらに、プレート、ハニカム培養したSMCのポリソーム画分に局在するmRNAのアレイ解析を行い、eIF4Bや4Gの発現の違いにより翻訳が促進される特異的な増殖関連分子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末までの物品購入の見積額と実際の購入額の差額があったため、少額の次年度使用額が生じた。
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