研究課題
本研究は、がん細胞における仮足形成に必須であるアクチン及び微小管の再構成機構(ダイナミンクロスブリッジ)を明らかにする。本年度は、in vitro解析法を駆使してダイナミン2野生型、K562E、K562delta変異体によるアクチン線維束を電子顕微鏡にて観察し、クライオ電子顕微鏡による構造解析に向けた試料調製条件の最適化を試みた。ダイナミン2タンパクは、コムギ胚芽無細胞タンパク合成系を用いて調製した。アクチン線維束の観察は、負染色後、透過型電子顕微鏡を用いて行なった。ダイナミン2野生型により形成されたアクチン線維束は、1個あたり幅が約50nmで、K562E及びK562deltaにより形成されたアクチン線維束と同様であった。しかし、ダイナミン2野生型により形成されたアクチン線維束は、別の複数の線維束とともに、さらに束化していた。K562E及びK562delta変異体により形成されたアクチン線維束は、野生型のものと比べて顕著に再束化するアクチン線維が少なかった。そのため、ダイナミン2野生型を用いたアクチン線維束は、クライオ電子顕微鏡観察に不適であることが判明した。以降、K562EまたはK562delta変異体を用いたアクチン線維束を構造解析に使用することになった。また、クライオ電子顕微鏡観察する場合には、試料の濃度を高くする必要がある。しかしながら、ダイナミン2は、濃度の高い状態では、凝集しやすいため、条件のさらなる検討が必要になった。次年度には、分散したアクチン線維束の形成を高濃度に得る条件を探し出し、クライオ電子顕微鏡観察に備えたスクリーニングを行う予定である。
3: やや遅れている
ダイナミン2を用いてin vitroにてアクチン線維束をコンスタントに形成させることに成功した。しかしながら、できたアクチン線維束が別のアクチン線維束とさらに束化することが認められ、構造解析に不向きであることが明らかになった。そのため、ダイナミン2の変異体のうち過度に重合しないものを検討する必要がある。今年度は、K562E及びK562deltaを使用した。今後、この変異体を用いて、クライオ電子顕微鏡解析に向けた条件の最適化を行いつつ解析していく。
以降、ダイナミン2変異体を用いて、最適なアクチン線維束の分散条件を見つけ出し、クライオ電子顕微鏡観察に向けた条件の最適化を行なっていく。このように、アクチン線維束形成過程の解明を主体に、構造の面からもさらに解析を進めていく。
計画的な物品の購入等により、予定より支出を減らすことができたため、次年度使用額が生じた。使用計画としては次年度実施予定のアクチン繊維束の形成条件の検討、およびクライオ電子顕微鏡観察に向けた条件の最適化等、アクチン繊維束形成過程の解明に必要な費用に充当する。
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Frontiers in Cell and Developmental Biology
巻: 10 ページ: 884509
10.3389/fcell.2022.884509
Frontiers in Cell and Infection Microbiology
巻: 12 ページ: 2022
10.3389/fcimb.2022.992198