研究課題
本研究は、がん細胞における仮足形成に必須なアクチン、微小管の再構成機構(ダイナミンクロスブリッジ)を明らかにすることである。引き続き、ダイナミン2とアクチン線維、微小管複合体の解析を行った。生理的イオン強度緩衝液中、ダイナミン2野生型とアクチン線維を混合すると、ダイナミン螺旋が形成され、そのリム部にアクチン線維が結合していることが高速原子間力顕微鏡(AFM)観察により判明した。さらに、本条件下、ダイナミン2単独では、ダイナミン螺旋を全く形成できなかった。これらの結果から、アクチン線維もしくは単量体アクチンがダイナミンと相互作用するとダイナミンの重合が促進される可能性が強く示唆された。そこで、ダイナミンが自己重合できるが単量体アクチンが重合できない低イオン強度条件にて、ダイナミン螺旋の形成を検討した。低イオン強度条件下、ダイナミンと単量体アクチンを混合したところ、アクチン線維を伴わない長いダイナミン螺旋が形成されることが、透過型電子顕微鏡観察からわかった。このダイナミン螺旋は、幅約50-60nmで生理的イオン強度条件下でダイナミン2とアクチン線維で形成される螺旋と同様の幅であった。さらに、プロリンリッチドメインを欠失したダイナミンは、螺旋状構造体を形成しなかった。よってアクチンはダイナミンのプロリンリッチドメインと相互作用していることが示唆された。現在、アクチン線維の伴わないダイナミン螺旋の性状解析を進めるとともに、本螺旋状重合体の構造を解明するため、クライオ電子顕微鏡観察にもちいるサンプルの最適条件を検討している。微小管に関しては、アクチンと混合した時様な構造体は観察できなかった。微小管はダイナミンが微小管に沿って重合する様式であり、アクチンのそれとは異なることが示唆される。
2: おおむね順調に進展している
研究の過程で、ダイナミンがアクチンと相互作用し、その作用がダイナミン螺旋の形成に影響があることが判明した。これらの結果は、予期しない重要な結果であったことから、さらに、その性状解析、構造解析を進めた。計画書にある構造が新規なものである可能性がたかまった。今後、この構造体の性状、構造を、クライオ電子顕微鏡解析を踏まえて条件の最適化を行いつつ解析していく。
以降、ダイナミンーアクチン複合体の性状、構造解析をすすめ、さらにクライオ電子顕微鏡観察に向けた条件の最適化を行なっていく。このよう に、アクチン線維束形成過程の解明を主体に、構造の面からもさらに解析を進めていく。
計画的な物品の購入等によって、また予期せぬ結果が出たため、予定より支出が減り、次年度使用額が生じた。使用計画としてはクライオ電子顕微鏡観察に向けた条件の最適化等に必要な費用に充当する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Genes Cells.
巻: 29 ページ: 17~38
10.1111/gtc.13080
Journal of Cell Science
巻: 136 ページ: -
10.1242/jcs.260827