研究課題/領域番号 |
22K06585
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
津川 仁 東海大学, 医学部, 講師 (30468483)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胃がん幹細胞 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
H. pylori感染胃がん患者50例、H. pylori感染胃炎患者50例を対象に十分なインフォームドコンセントと文書同意を得たのち採取した胃液検体を用いて、胃内の短鎖脂肪酸(SCFAs)濃度を液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(LC-ESI-MS/MS)により測定し、胃がん患者の胃内SCFAs濃度と胃炎患者で比較した。その結果、胃がん患者胃内でのpropionate濃度は有意に高くまた、butyrate濃度も上昇傾向を示すことを明らかとした。この結果は研究代表者の仮説である「胃粘膜内へSCFAsを供給する胃内共生細菌はCAPZA1の過剰発現を誘導し、そこへH. pyloriががん蛋白質CagAを注入すると細胞内でCagAは安定化し、CD44v9陽性がん幹細胞が発生する」の仮説を支持する結果であり、次に、胃発がんカスケードの進展に関わる胃内共生細菌を、SCFAs産生性という細菌学的特性を指標に、胃がん患者より採取したヒト胃液検体から抽出した細菌性DNAを用いて次の方法で特定の細菌探索を行った。ヒト胃液検体から抽出した細菌性DNA から16SrRNAをPCR増幅しTA cloningにより16SrRNAをクローン化し、16SrRNAのサンガーシークエンスから細菌種を同定し、胃炎患者に比べ胃がん患者でその存在量が亢進しているかを定量的real-time PCRにて評価し、胃がん患者特異的にその相対的存在量が亢進しているSCFAs産生細菌を探索した。その結果、Streptococcus属細菌が同定され、本菌とH. pyloriの共感染状態により、胃発がん性シグナルが惹起されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胃液検体内の短鎖脂肪酸濃度の測定と標的細菌の絞り込みができたことで、今後、胃がん幹細胞の発生過程解明に向けて、計画している細菌学的な分子生物学的学試験に取り掛かることができる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、胃液内で検出されたSCFAsが胃がん部組織内へどの様にアクセスしているかについて、胃がん組織検体に対するイメージングマススペクトロメトリー解析を実施し、胃がん部組織内と非がん部組織内のSCFAs濃度レベルを定量的視覚化比較解析し、がん部組織内へのSCFAs集積性を明確にする。SCFAs濃度の亢進が認められるがん部領域特異的にCD44v9陽性細胞が検出されるかを免疫組織化学的に解析し、CD44v9陽性細胞の発生に対するSCFAsの関与を明確にする。また、同定されたStreptococcus属細菌の胃オルガノイド及びマウスモデルを用いてH. pyloriとの共感染モデルを構築しCD44v9陽性がん幹細胞発生機序の解明に向けた解析を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりもやや順調に実験ができたため次年度使用額が生じた。 発生した次年度使用金額は、本年度使用計画の物品費として使用する計画である。
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