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2023 年度 実施状況報告書

H. pylori感染者の中から胃がん発症者が選択される理由の分子機序

研究課題

研究課題/領域番号 22K06585
研究機関東海大学

研究代表者

津川 仁  東海大学, 医学部, 講師 (30468483)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードがん幹細胞 / 短鎖脂肪酸 / CD44v9 / CagA / ピロリ菌 / 胃がん
研究実績の概要

H. pylori感染胃がん患者、H. pylori感染胃炎患者より十分なインフォームドコンセントと文書同意を得たのち採取した胃液検体を用いて、胃内の短鎖脂肪酸(SCFAs)濃度を液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(LC-ESI-MS/MS)により測定し、胃がん患者の胃内SCFAs濃度と胃炎患者で比較した。その結果、胃がん患者胃内でのpropionate濃度は有意に高くまた、butyrate濃度も上昇傾向を示すことを明らかにしたとともに、H. pylori感染者の中での早期胃がん発症者全員が胃内短鎖脂肪酸濃度が高いグループに分類されることが明らかになった。また、これら胃内の菌叢解析を実施すると、胃発がんに関わる特定の胃内共生細菌を同定することはできなかったが、胃がん発症者の胃内細菌叢は短鎖脂肪酸産生性細菌叢組成にエンリッチされていることが明らかになった。一方で、ヒト胃がん患者胃液検体から抽出した細菌性DNA から16SrRNAをPCR増幅しTA cloningにより16SrRNAをクローン化し、胃内細菌の16SrRNA ライブラリーを構築し、それよりピックアップされた細菌の16SrRNAのサンガーシークエンスから、胃がん患者特異的にその相対的存在量が亢進しているSCFAs産生細菌として、Streptococcus属細菌を同定してきた。本年度、本菌の培養上清中をHPLC解析すると、一般大腸菌にくらべ培養上清中へのpropionate及びbutyrateの産生能が高いことが示され、また、本菌の培養上清存在下でのH. pylori感染では、CAPZA1の過剰発現誘導を介した、CD44v9発現の亢進が確認でき、Streptococcus属細菌とH. pyloriの共生関係では、CD44v9陽性細胞の発生を介して胃発がんリスクが亢進すると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

胃発がんリスクに関わるH. pylori以外の胃内共生細菌の探索・同定が進み、ひとつの共生細菌候補が明らかになった。さらに、同定細菌の細菌学的キャラクターの解析も進み、H. pyloriとの共感染により進展する胃発がんカスケードに関する情報も明らかになり始めている。加えて、臨床検体を用いた解析も実施できており、基礎細菌学的解析により明らかになり始めた結果が、臨床検体を用いた解析結果からも裏付けられ始めている。

今後の研究の推進方策

同定されたStreptococcus属細菌とH. pyloriの共感染モデルを胃オルガノイド及びマウスモデルを用いて構築し、共生細菌の関与するCD44v9陽性細胞の発生過程の解明とそれに伴う胃発がん過程の解明に向けた解析を実施する。加えて、胃液内で検出されたSCFAsが胃がん部組織内へどの様にアクセスしているかについて、胃がん組織検体に対するイメージングマススペクトロメトリー解析を実施し、胃がん部組織内と非がん部組織内のSCFAs濃度レベルを定量的視覚化比較解析し、がん部組織内へのSCFAs集積性を明確にする。

次年度使用額が生じた理由

培養細胞(Cell line)を用いて行なう実験回数が増えたため、予定していたマウス胃由来オルガノイド作製回数が減少したことで次年度使用額が発生した。また本年度は、オルガノイドの作製並びにマウスを用いたin vivo感染実験の実施により、次年度使用額並びに2024年度分研究費を使用する計画である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Cyclic-di-AMP confers an invasive phenotype on Escherichia coli through elongation of flagellin filaments2024

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Rika、Imai Jin、Sugiyama Eiji、Tsubaki Shogo、Hozumi Katsuto、Tsugawa Hitoshi
    • 雑誌名

      Gut Pathogens

      巻: 16 ページ: 6

    • DOI

      10.1186/s13099-024-00600-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Gas6 ameliorates intestinal mucosal immunosenescence to prevent the translocation of a gut pathobiont, Klebsiella pneumoniae, to the liver2023

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa Hitoshi、Ohki Takuto、Tsubaki Shogo、Tanaka Rika、Matsuzaki Juntaro、Suzuki Hidekazu、Hozumi Katsuto
    • 雑誌名

      PLOS Pathogens

      巻: 19 ページ: e1011139

    • DOI

      10.1371/journal.ppat.1011139

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of serological assays to identify Helicobacter suis and H. pylori infections2023

    • 著者名/発表者名
      Matsui Hidenori、Rimbara Emiko、Suzuki Masato、Tokunaga Kengo、Suzuki Hidekazu、Sano Masaya、Ueda Takashi、Tsugawa Hitoshi、Nanjo Sohachi、Takeda Akira、Sasaki Makoto、Terao Shuichi、Suda Tsuyoshi、Aoki Sae、Shibayama Keigo、Ota Hiroyoshi、Mabe Katsuhiro
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 26 ページ: 106522~106522

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.106522

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Adherent-invasive E. coli ? induced specific IgA limits pathobiont localization to the epithelial niche in the gut2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Rika、Imai Jin、Tsugawa Hitoshi、Eap Karl Bil、Yazawa Masaki、Kaneko Motoki、Ohno Masashi、Sugihara Kohei、Kitamoto Sho、Nagao-Kitamoto Hiroko、Barnich Nicolas、Matsushima Masashi、Suzuki Takayoshi、Kagawa Tatehiro、Nishizaki Yasuhiro、Suzuki Hidekazu、Kamada Nobuhiko、Hozumi Katsuto
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 14 ページ: 1031997

    • DOI

      10.3389/fmicb.2023.1031997

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Klebsiella pneumoniaeの生存戦略における菌体外膜小胞の役割2023

    • 著者名/発表者名
      津川 仁、椿翔吾、梨本尚、荒木琢磨、 吉岡祐亮、松崎潤太郎
    • 学会等名
      第34回 日本生体防御学会学術総会
  • [学会発表] Klebsiella pneumoniaeのsmall RNAは菌体外膜小胞で宿主細胞内へ運ばれる2023

    • 著者名/発表者名
      椿翔吾、 荒木琢磨、 吉岡祐亮、松崎潤太郎、津川 仁
    • 学会等名
      第69回 トキシンシンポジウム
  • [学会発表] Gas6 ameliorates intestinal mucosal immunosenescence and prevents the bacterial translocation of orally infected Klebsiella pneumoniae from the gastrointestinal tract2023

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa H, Tsubaki S, Tanaka R, Matsuzaki J, Hozumi K.
    • 学会等名
      Cell Symposia: Infection biology in the age of the microbiome
    • 国際学会
  • [学会発表] Klebsiella pneumoniae-derived small RNAs are delivered into host cells by bacterial extracellular vesicles2023

    • 著者名/発表者名
      Tsubaki S, Matsuzaki J, Yoshioka Y, Araki T, Tsugawa H
    • 学会等名
      International Society for extracellular vesicles 2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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