研究課題/領域番号 |
22K06586
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
藤木 恒太 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80632504)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストレス応答 / 尿細管細胞死 / カドミウム |
研究実績の概要 |
尿細管細胞死は、外的ストレス依存的に腎障害が生じる多くの場合に観察される現象であるため、その機序の解明は、腎障害の病態機序の理解に繋がる重要な課題である。環境汚染物質カドミウムにヒトが曝露された場合も尿細管細胞死が観察されるが、その機序は不明な点が多い。そこで、申請者は、ヒト尿細管(HK-2)細胞を用いてカドミウム曝露依存的細胞死誘導シグナルの解析を行うことにした。これまでの解析から、カドミウム曝露下のHK-2細胞では、カドミウム曝露依存的に蓄積した不良タンパク質をaggresome-autophagy-lysosome系を介して消化することで、蓄積した不良タンパク質が発現するタンパク質毒性を抑制している可能性が示された。また、カドミウム曝露下のHK-2細胞では、Paxillin抗体で染色されるドットがaggresomeに強く集積することを見出した。近年、不良タンパク質凝集体が特定の因子を取り込むことで、細胞内シグナルを制御することが報告されている。そこで本年度は、真にPaxillinがaggresomeに集積するのか、また、集積するとすればその意義は何なのかについて注目し、解析した。その結果、①当初観察されたaggresomeに集積するPaxillin抗体で染色されるドットは擬陽性であったこと②新規購入したPaxillin抗体の染色像でも、aggresomeに弱いながらドットの集積が観察され、そのドットはPaxillin siRNA処理で消失すること④proteasome阻害剤処理依存的に形成されるaggresomeには、Paxillinのドットが集積しないこと⑤Paxillin siRNA処理によってカドミウム毒性が促進されることを見出した。現在は、更に詳細について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、抗体染色法を用いてaggresomeに集積する因子、特にPaxillinに注目し、解析を行っている。本年度の解析過程において、当初用いたPaxillin抗体は、擬陽性でカドミウム曝露下のaggresomeを染色してしまうことが明らかとなった。これにより、当初予定よりも進行に遅れが生じたが、新規購入したPaxillin抗体を用いることで当初予定していた解析計画が実行可能となり、全体としては順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、現在までに得られている知見を踏まえながら研究計画を修正し、解析を進めていく。具体的には、①HK-2細胞においてPaxillinがaggresomeに集積する分子機序を検討する②HK-2細胞においてPaxillinがカドミウム毒性を抑制する機序について検討する③初代培養細胞など、他の近位尿細管細胞株でもHK-2細胞と同様のPaxillinの動態変化が観察されるかを検討する④aggresomeへのPaxillinの集積は、カドミウム刺激特異的に観察される現象であるのか調べるため、神経変性疾患病理モデルを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画実施中に研究計画の再考が必要となり、申請額との差額が生じている。また、過去に経験のない研究試薬・消耗品の高騰のため、より積極的な必要試薬・消耗品の再利用・倹約に努めており、そのため申請額との差額が生じている。
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