研究課題/領域番号 |
22K06587
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
東 伸昭 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40302616)
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研究分担者 |
小宮根 真弓 自治医科大学, 医学部, 教授 (00282632)
福澤 薫 (秋葉薫) 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (50718244)
眞鍋 史乃 星薬科大学, 薬学部, 教授 (60300901)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヘパラナーゼ / 酵素阻害物質 / ヒアルロン酸 / コンドロイチン硫酸 / 抗体複合体 / 融合タンパク質 / アトピー性皮膚炎 / ターゲッティング |
研究実績の概要 |
本研究課題では、論文で報告したヘパラナーゼ酵素活性を抑制する糖鎖の情報をもとに、[1]特異性と高親和性の二要素を分子内に最適化した糖鎖由来阻害分子を創出する、[2]ヘパラナーゼの競合分子であるヘパラナーゼ2の発現や阻害効果を増強する方法を見出す、さらに[3]ではヘパラナーゼの機能抑制によって基底膜と表皮構造の正常化、皮膚炎の抑制が可能であるか見出す、の3点を目的としており、これらの成果を統合することで、ヘパラナーゼを標的とする創薬に取り組む。 課題1では、阻害分子に細胞特異性を付与する一つの方法として細胞特異的な抗体の機能に着目する。すなわち、ヘパラナーゼ阻害効果を有する硫酸化糖鎖を抗体に結合させた分子の創生を試みた。抗体を蛍光タンパク質で標識する方法を応用し、異なる官能基を有する2価性の介在分子を介する結合によって、ヘパラナーゼ抑制性糖鎖とがん特異的抗体の結合が示唆される実験結果を得た。一方で、両者の結合効率の決定には至らず、また未反応物質を取り除く方法についても今後の検討課題として残された。課題2ではヘパラナーゼ2の遺伝子クローニングならびにそのFc融合タンパク質としての発現を行った。産生量が高くないものの、1 microg/ml程度の濃度で、精製されたヘパラナーゼ2融合タンパク質を調製することが可能となった。課題3では、阻害物質の評価に用いることの可能なアトピー性皮膚炎動物モデルの作出に取り組んだ。低分子ハプテンとして知られるDNFBで経皮的に処置することにより、表皮の肥厚、真皮マスト細胞の増加、発赤を特徴とする皮膚炎症を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究申請書時点の課題のうち、課題1の糖鎖由来阻害分子については材料が十分でないことから進行が遅れている。課題2のヘパラナーゼ2については、発現量が低いという問題に直面しており、シグナルペプチドの改変などの工夫が必要であろうと考える。課題3については、動物モデルによる評価系を個体差の少ない安定した評価系に改善していくことが必須である。2022年度も特に前半においてコロナ禍による研究の寸断が生じたが、年度後半で状況がかなり改善されてきた。
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今後の研究の推進方策 |
課題1~3を通じて、ヘパラナーゼ阻害物質を最適化することにより、疾患治療への適用を試みてゆく。課題1では糖鎖と抗体の安定した結合の成立について引き続き試みる。また、近年構造解析で見出された1-アザ糖とヘパラナーゼとの相互作用にも着目し、この相互作用に特異性を付与するアプローチも試みたい。課題2ではヘパラナーゼ2の高発現株の作製に引き続き取り組む。ヘパラナーゼの立体構造についてはX線結晶構造解析が完了しているため、これを利用してヘパラナーゼ2についてもより抑制性を高めた改変体の創生にも取り組む。一方、評価系として融合タンパク質の炎症抑制作用を検討する必要が出てくるものと思われる。課題3ではアトピー性皮膚炎病態モデルを安定した評価系に改善してゆくが、この系を課題2の評価系にも取り込んでゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の配分額に対し、115,475円の未使用額を生じた。2022年度は、炎症シグナルを解析するための抗体と培養・遺伝子関連消耗品を購入した。未使用額を生じた理由は、年度前半にコロナ禍で研究が寸断され、継続的な検討ができなかったためである。2023年度以降は、課題1~3の実施に必要な物品の購入に予算を充当することにより、研究の遅れを取り戻したい。
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