研究実績の概要 |
カドミウム(Cd)曝露による腎臓のミトコンドリアダイナミクスへの影響を解析し、この障害とCdによる再吸収障害との関係を明らかにするか検討した。Cd-MT投与による腎障害誘発モデルを使用し、ICR雌マウスにCd-MTを0.05, 0.1, 0.2, 0.3 mg Cd/kg投与マウスの腎臓を摘出し、1日後の腎臓においてミトコンドリア形態異常が起こるかどうか、電子顕微鏡で解析した。Cd-MT投与により腎臓のミトコンドリアは、細胞によって障害の程度が異なっており、ミトコンドリア障害がヘテロに観察された。濃度依存的に障害を受けているミトコンドリアの割合が増加していた。Cd-MT投与によりミトコンドリアの密度が減少し、ミトコンドリア膜は障害を受け、脱落が認められ、形態がいびつになっていることが観察された。Cd-MT 0.2 mg/kg投与群以上の濃度では、クリステが崩壊しているミトコンドリアも観察された。最も高い投与濃度である0.3 mg/kg投与群では細胞の空砲化も観察された。 ミトコンドリアは常に融合と分裂を繰り返し、この構造変化はミトコンドリアの機能と密接に関連している。そこで、培養細胞ではラット由来のNRK-52E、マウス由来のS1細胞を用いてCd曝露を行い、Cd曝露がミトコンドリアの形態と機能に及ぼす影響、およびそれらを調節する因子を解析した。CdCl2曝露3日後にNRK52EおよびS1細胞において、CdCl21日曝露により、S1細胞ではOPA1, DRP1およびSIRT1の発現低下も見られた。NRK52E細胞では、OPA1, DRP1およびSIRT1, SIRT3の発現が低下した。またどちらの細胞においてもミトコンドリア呼吸鎖複合体の発現低下が見られた。以上の結果から、細胞レベルにおいてもCdによってミトコンドリア障害が起こっており、形態変化が起こっている可能性が示唆された。
|