研究実績の概要 |
カドミウム(Cd)による腎障害は、近位尿細管において低分子タンパク質やリン(Pi)の再吸収障害を特徴とするが、その発症機構は明らかになっていない。これまでの当研究室の検討で、Cd-MTを投与した腎障害誘発モデルマウスにおいて、Piや糖などの再吸収障害が起こることを明らかにした。マウスに0.2、0.3、0.4 mg Cd/kgの濃度でCd-MT皮下投与し、1、4、7日後に、解剖し採尿、採血を行い、解析した。その結果、Cd-MT投与によりミトコンドリアの形態変化、腎臓中のATP量や呼吸鎖タンパク質発現量の低下が起こっていることが分かった。しかし、腎臓内ATP量については、Cd-MT投与により、0.2, 0.3 mg/kgの投与濃度では低下していたが、0.4 mg/kgの投与濃度では変化しなかった。この原因については検討が必要である。以上の結果より、ミトコンドリアの機能低下が糖やPi、Caなどのの再吸収障害に寄与している可能性が示唆された。 次に、詳細な機構の検討のため、再吸収が盛んな領域である近位尿細管のS1領域由来不死化細胞を用いて検討した。S1細胞をCdCl2に24時間曝露後、細胞内グルコース取り込み量が低下した。また、S1細胞をCdCl2に24時間曝露により、SIRT3およびミトコンドリア呼吸鎖タンパク質(COX7A2L, NDUFA8, NDUFV, VDAC1)量が低下した。さらにCd曝露により、ミトコンドリア膜電位が低下し、細胞内ATP量も低下することが明らかになった。 以上の結果により、Cd曝露による糖などの再吸収障害には、ミトコンドリア機能障害が関与している可能性が示唆された。
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