研究課題/領域番号 |
22K06593
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30291131)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / 糖転移酵素 / 転写制御 / センサー細胞 / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
令和4年度は研究実施計画に基づいて、神経芽腫の悪性形質に関わるβ4-ガラクトース転移酵素 (β4GalT) 3の転写因子N-Mycによる転写活性化の分子メカニズムの解析を実施した。定量的RT-PCRによって、N-MycのmRNA発現はSH-SY5Yヒト神経芽細胞腫ではA549ヒト肺癌細胞に比べて12倍高いことが示された。そのため共導入実験ではN-Mycの効果がより顕著に現れることを期待して、N-Mycの発現が低いA549細胞を使用することとした。初めに、β4GalT3遺伝子の5’-上流領域に存在する3箇所のN-Myc結合部位のうち、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には-1148/-1143のN-Myc結合部位が関わっていることを特定した。次に、β4GalT3の転写を制御する転写因子Sp3とN-Mycの相互関係を明らかにするために、Sp3結合部位 (-39/-30と-19/-10) に変異を導入したレポータープラスミドとN-Myc発現プラスミドを共導入することで、N-Mycによるβ4GalT3プロモーターの活性化の有無を解析した。その結果、Sp3結合部位に変異を導入すると、N-Mycを共導入してもプロモーター活性は増加しなかった。従って、N-MycがSp3と共同してβ4GalT3の転写を活性化することが初めて明らかにされた。さらに、β4GalT3の転写活性化にSp3とN-Mycがどのような分子メカニズムで関与するかを明らかにするために、Sp3とN-Mycの相互作用を解析した。SH-SY5Y細胞から調製した核抽出物を試料として抗Sp3抗体を用いた共免疫沈降を行ない、ウエスタンブロット解析によりSp3とN-Mycを検出した。その結果、共免疫沈降物中にSp3が検出されたが、N-Mycは検出されなかった。従って、Sp3とN-Mycは直接相互作用していない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であるβ4GalT3の転写因子N-Mycによる転写活性化の分子メカニズムの解明を達成するために、3項目から成る研究実施計画 (N-Mycによる転写活性化に関与するN-Myc結合部位の決定、N-MycのN-Myc結合部位への結合性の解析、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化へのSp3の関与の解析) を立てた。令和4年度は研究実施計画に基づいて、幾つかの新しい知見が得られた。ヒトβ4GalT3遺伝子の5’-上流領域に存在する3箇所のN-Myc結合部位のうち、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には-1148/-1143のN-Myc結合部位が関わっていることを特定した。また、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には、β4GalT3のプロモーター領域に存在するSp3結合部位 (-39/-30と-19/-10) が重要な役割を果たしていることを示した。さらに、抗Sp3抗体を用いた共免疫沈降により、Sp3とN-Mycは直接相互作用しない可能性を見出した。以上の研究成果から、研究目的を、おおむね順調に達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はSp3とN-Mycのβ4GalT3への転写活性化への関与の分子メカニズム研究をさらに発展させ、これを薬剤スクリーニングに結びつけるため、以下の実験を予定している。令和4年度に得られた共免疫沈降実験の結果を検証するために、タグを付きのSp3を発現するためのプラスミドを作製する。このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、タグに対する抗体を用いた共免疫沈降によってN-MycとSp3の相互作用を解析する。また、免疫沈降実験に用いることができる良い抗N-Myc抗体がないため、共免疫沈降やクロマチン免疫沈降アッセイを行うために、同様にタグ付きのN-Mycを発現するためのプラスミドを作製する。タグ付きN-Myc発現プラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、タグに対する抗体を用いた共免疫沈降によってN-MycとSp3の相互作用を解析する。さらに、このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、クロマチン免疫沈降アッセイによりN-MycのN-Myc結合部位への結合を解析する。N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化がSp3を介して行われているかを検討するため、Sp3ノックダウンプラスミドを作製する。このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、Sp3とβ4GalT3のmRNA発現やプロモーター活性を解析する。また、この実験をN-Myc発現プラスミドを導入しても行う。令和4年度に明らかにしたN-Mycによる転写活性化に関わる領域を、抗生物質耐性遺伝子を有するルシフェラーゼレポーターベクターに組込む。これをSH-SY5Y細胞に導入して、抗生物質存在下で培養することでセンサー細胞を樹立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究費が生じた状況:実験の効率化を図ったことにより、当初使用を予定していた研究費を一部使用することなく、令和4年度の研究実施計画をおおむね達成できた。
翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画:幾つかの研究実施計画に関して、さらに詳細に解析する必要があるのと、令和4年度から継続している研究実施計画があるため、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する。
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