研究課題
認知症をはじめとする神経変性疾患の克服は、超高齢化社会の健全性を維持する上で喫緊の課題である。多様な病状を呈する神経変性疾患であるが、その初期において共通して認められる分子病態として軸索輸送障害が注目されており、精力的に解析が進められている。我々は、順行性高速軸索輸送の主要成分であるキネシンモータータンパク質を、単独でかつ強制的に活性化することによって、自身を含む小胞を「特権的」に輸送させることのできるユニークな膜タンパク質Alcadein(Alc)を同定し、解析を進めている。本年度は、Alcα欠失マウスにおいて見出したアミロイド産生的代謝の亢進について、そのアルツハイマー病(AD)病態への寄与についての検証を進めるために、Alcα欠失マウスと、非生理的過剰発現による人為的表現型の発現を排したマウスモデルであるヒトAPPノックインマウスとの交配をおこない、当該モデルマウスにおけるAD病態が、Alcαの欠失による「特権的」小胞輸送の欠落によりどのような影響を受けるかを、病態生化学的・病理学的な解析を進めることにより検証した。その結果、Alcαの欠失により、Aβ40/42の産生と老人斑の形成がともに亢進することが確認され、特権的小胞輸送の欠落がAD病態に促進的に働きうることが明らかとなった。また、Alcs欠失マウスの系統的病理検索を進めたところ、12ヶ月令程度までは、顕著な異常が認められることはなかった。
2: おおむね順調に進展している
ヒトAPPノックインマウスを用いた検証が進み、AlcαのAD病態への寄与を明らかにすることができたため。
Alc欠失老齢マウスを調製し、その系統的な解析をおこなう。また、Alcによって特権的に輸送される因子の同定を進める。
マウスの繁殖の一部が不調となり、予定していた解析の一部が延引されたため。当該マウスの調製と解析を次年度に進めていく。
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Biochim. Biophys. Acta Mol. Cell Biol. Lipds
巻: 1867 ページ: 159222
10.1016/j.bbalip.2022.159222.