研究実績の概要 |
令和4年度は、オーキシンデグロンシステムを利用したプロテインノックダウン実験系をAspergillus fumigatus に実装するための、技術基盤整備に着手した。特に、オーキシンデグロンの主要構成要素である OsTIR1 遺伝子を Aspergillus 属の恒常発現プロモーター PkpiA や誘導発現プロモーター PglaAの下流で制御するように発現ベクターを組換えつつ、OsTIR1 タンパク質をコードする塩基配列のコドン最適化を検討 することで、Aspergillus 属真菌における TIR1 タンパク質発現レベルの改善に成功した。 同時並行で、本菌のプロテインノックダウンのよりよい遺伝子標的を探す目的で、細胞壁ガラクトマンナン生合成にかかわる遺伝子を探していたところ、それぞれ独立にガラクトマンナン生合成を担う Mnt1、AnpAを同定し、査読付き英語論文誌にて報告した (Kadooka et al., Glycobiology, 2023; Kadooka et al., mSphere, 2023)。Mnt1は糖タンパク質型ガラクトマンナン、AnpAは糸状菌型コアマンナンの生合成に寄与していた。anpA遺伝子欠損株では、既知の cmsA 遺伝子欠損株と同じレベルでコアマンナン構造が高度に破壊されるが、cmsA遺伝子欠損株で見られるような 高度の菌糸生育異常は観察されない。このことは、コアマンナン構造の破壊と糸状菌型生育が必ずしも相関しないことを示唆する。プロテインノックダウンの標的としてAnpAを試してみることで、コアマンナン構造と菌糸型生育の相関関係をより深く理解することができるだろう。
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