研究課題
申請者はプロテアソーム不全時のプロテアソーム機能維持にタンパク質O-GlcNAc修飾の亢進およびユビキチンリガーゼRNF181が重要であることを見出した。本研究では、プロテアソーム機能維持に重要な働きをする具体的な因子および分子メカニズムを明確にするために、以下の観点から計画を実施した。1: プロテアソーム機能維持機構における具体的な分子機能の解明O-GlcNAc修飾タンパク質のうちプロテアソーム機能維持に重要な因子の探索による具体的な作用メカニズムの解明。RNF181のユビキチン化標的を明らかにすることによるプロテアソーム合成制御に働くメカニズムの解明。2: マウス個体を用いたプロテアソーム機能維持機構の生理機能の解明細胞での検証で明らかになった分子機能がどのような生理的意義を持つかマウス個体での検証による、プロテアソーム機能不全に起因する病態への効果の検証。これらの推進により、これまでのところ計画を順調に推進することができ、従来の概念から想定されるプロテアソーム機能制御機構とは異なる新規性の高い分子機構を明らかにしつつある。本年度は特に動物実験および具体的な証明や詳細の解析について条件検討や新たな実験系の検討に多くの労力を割いた。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニングで同定したO-GlcNAc化基質の候補因子がO-GlcNAc経路に関連するのか、直接O-GlcNAc修飾されるのか生化学解析により順次検証している。RNF181 KO細胞においてbortezomib処理下でのプロテアソーム分子集合の不全を確認している。また、哺乳類培養細胞での免疫沈降実験からRNF181とプロテアソームサブユニットとの会合を確認した。さらにRNF181が特定のサブユニットをユビキチン化することが質量分析解析により示唆されたことから、RNF181活性変異体やサブユニットのユビキチン化部位変異体の作成など詳細な解析を集中して行った。腫瘍モデルおよびすでに樹立ずみのbortezomib耐性細胞において候補因子のノックダウンおよび阻害剤におけるbortezomibとの併用効果を検証した。RNF181 KO細胞を移植したマウス腫瘍形成モデルにおけるbortezomibによる腫瘍増殖抑制効果の増強を確認し、bortezomibとの併用によるがん治療の新規治療標的としてのRNF181の有望性が示された。個体においてRNF181が担うプロテアソーム機能維持機構の生理的意義を調べるためにRNF181 KOマウスの作出に成功した。マウス個体における生化学解析を主に行い、細胞株での実験で観察されていた結果がprimary MEFでも再現できることなど、これまでの結果の信頼性を補強する結果を得ている。
サブユニット分子集合過程におけるRNF181の働きを明確にする検証作業を進める。RNF181 KO細胞およびプロテアソームサブユニットユビキチン化部位変異体発現細胞において異常なプロテアソーム形成中間体の蓄積を確認することでRNF181 がユビキチン化を介してサブユニット分子会合に関与するか検証する。そこでRNF181ユビキチンリガーゼ活性変異体についても同様の検証を行い、リガーゼ活性が機能発揮および阻害標的として適切か明らかにする。また、作出したKOマウスについて病態の発症や進行について運動機能測定や組織免疫染色、各種バイオマーカー測定を行い検証する。プロテアソーム阻害以外にどのような生理的な現象、ストレス応答にRNF181が重要であるかを明らかにする。概ね計画は推進できており、難航している実験についての準備や条件等に時間と労力を十分かけたことから、来年度以降は成果発表に繋げるための詳細な証明に資する結果の取得を予定している。
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