研究課題/領域番号 |
22K06614
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
伊藤 萌子 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60711827)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アデノシンデアミナーゼ |
研究実績の概要 |
アデノシンデアミナーゼ(ADA)2欠損症は、アデノシン代謝酵素ADA2をコードする遺伝子の機能喪失変異によって発症する自己炎症性疾患である。ADA2欠損症では、血中ADA2の酵素活性が低下することに不随して、結節性多発動脈炎や免疫・血液学的症状などが現れる。本研究は、機能喪失変異型ADA2の生合成過程における性質を明らかにすることを目的に、細胞内で形成される多様な立体構造と酵素活性発現の関係の解明を目指した。 2023年度は、主要な単一アミノ酸変異体のコンストラクトを作成するとともに、その一部について細胞内における分子サイズの比較と薬理シャペロンへの応答性を調べた。まず、一過性に発現させた細胞の溶解液をゲルろ過クロマトグラフィーで分画し、各画分をSDS-PAGE、ウエスタンブロットで解析して二量体形成量を評価した。また、blue native PAGEによる分子サイズ評価系も構築し、同様の実験系で二量体形成量を評価した。さらに、それぞれの変異体の安定性をthermal shift assayにより評価するため、バッファー、リガンドなどの諸条件を検討し、熱変性温度(Tm)に関し予備的結果を得た。また、薬理シャペロンによる変異型ADA2の凝集阻害および分泌量に及ぼす効果を調べるため、一部の変異体において数種類の薬理シャペロンを単独あるいは組み合わせで用いて効果を比較し、最適な組み合わせおよび濃度を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)実験に使用する主要な単一アミノ酸変異体のコンストラクトの作成、2)構造、安定性など各種評価系の構築が概ね終了した。また、3)正常ADA2の構造維持に重要な翻訳後修飾を同定し、4)熱に対する構造安定性を制御する要因を明らかにした。一方、単球系細胞株を用いた実験系については調整中である。また、凝集状態にある変異型ADA2の調節に関与する細胞内機構の解明については2023年度に引き続き現在進行中であるためやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
変異型ADA2発現細胞の二量体形成量と分泌・酵素活性の相関性の解析を引き続き行い、変異型ADA2とタンパク質品質管理機構の関係性についても実験を進めていく。薬理シャペロンによる変異型ADA2の凝集阻害効果については、諸条件が決定したため各種変異体に対する効果に関する評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の研究の進展に伴い調整した結果残額が生じた。 2024年度は予定している各種実験に必要な消耗品(細胞培養関連試薬・プラスチック製品、蛍光免疫染色用試薬、細胞実験のための各種試薬)の購入に充てる。
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