研究実績の概要 |
超高齢社会の我が国において、認知症と骨格筋量の低下(サルコペニア)は、解決すべき喫緊の課題である。サルコペニアの発症リスクが上昇する骨粗鬆症の患者ではアルツハイマー病(AD)を始めとする認知症症の発症リスクが高まる。また、骨粗鬆症モデル動物にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与すると骨密度減少に改善が見られ、Aβ 蛋白の分解や Aβ42をAβ40 に変換して認知機能を上昇させる役割も示唆されている。これらの知見から、両疾病間には因果関係が示唆されている筋力トレーニングや中強度の歩行運動は、骨密度減少の緩和(Iwamoto et al., 2005)のみならず、小脳皮質機能の活性化 (Won et al., 2021)、軽度認知障害(MCI)やAD患者の認知機能低下やASD症状の緩和をもたらす(Chirles et al., 2017, Cho et al., 2016, Yang et al., 2021)。しかしながらこのような知見に対しては、反証となる文献もまた多く、その分子機序自体が不明である。そこで、遺伝的に均一なマウスに対する介入研究による検証が重要となる。継続的な運動やその他の薬理学的、非薬理学的処置が、骨密度や骨格筋量の減少を緩和させるか、ひいては各種疾患モデルマウスの中枢機能障害への有効な予防医学的介入になりうるかを明らかにすることを目的に、まず試験装置の導入、さらにこれを用いた行動学的手法の条件検討に行った。具体的には野生型マウスに対する運動負荷法の検討・確立を目指した。野生型マウスを対照群と運動群に分け、様々な条件(時間、角度)で強制トレッドミル試験を用いた走行負荷をかけた。その後、運動協調や運動学習、自発的行動試験などの行動的評価を行った。
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