研究課題/領域番号 |
22K06620
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
岩本 淳一 東京医科大学, 医学部, 教授 (10384950)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10468639)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60532687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アスピリン / サリチル酸(SA) / 小腸粘膜障害 |
研究実績の概要 |
令和4年度は,異なるpH (4, 7, 9)条件下や,ラットの肝組織と小腸由来細胞株(IEC-6),マウス盲腸内容物の各ホモジネート液やブタ膵臓リパーゼと共に,ASAを試験管内でインキュベーションし,脱アセチル化率をLC-MS/MS装置を用いて評価した.また,IEC-6培養細胞をASA曝露下で培養し,細胞内のSA/ASA比と細胞傷害度(MTT assay)の関係を検証した.各種条件下でASAをインキュベーションした結果,pHによる脱アセチル化率の違いや,膵リパーゼによる脱アセチル化は無かった.一方,ラット肝とIEC-6のホモジネート液内では,ASAの脱アセチル化が顕著に進み,煮沸(酵素失活)処理やエステラーゼ阻害剤であるフッ化カリウム(KF)の添加により脱アセチル化が有意に抑制された.また,盲腸内容物とのインキュベーションでも,時間依存的に脱アセチル化が有意に進行し,煮沸処理やKF添加によりキャンセルされた.さらにIEC-6培養細胞の生存率は,ASAの添加量に伴う細胞内SA量の増加に依存して有意に低下した.ASAの脱アセチル化によるSA生成は,pHや膵リパーゼの影響は少なく,腸内細菌や小腸上皮細胞が持つエステラーゼによって引き起こされると考えられた.腸溶性アスピリンによる小腸粘膜傷害は,小腸内で産生されたSAによる直接作用である可能性が強く示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎実験で,ASAの脱アセチル化によるSA生成が生じる各種条件の検討ができ,SAによる直接作用によって小腸粘膜傷害が起こる可能性が検証できたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年は、アスピリンの各種胆汁酸の相互作用を検討すヒト型胆汁酸マウスを用いてアスピリンによる腸内細菌叢を比較やLDA内服者から血清胆汁酸の採取や、カプセル内視鏡を実施し内視鏡所見を収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)令和4年度に注文した物品の納品と請求が遅れて、令和5年度になってしまったため。(使用計画)生じた次年度使用額分は、物品の納品と請求書の入手を待って使用予定である。令和5年度の直接経費は、LC-MS/MS分析のための消耗品購入に使用するほか、培養細胞購入、マウスの維持繁殖費に使用する予定である。
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