研究実績の概要 |
本研究は、既知のスフィンゴミエリン合成酵素とは進化的に大きく異なると予想されるクラミジア・トラコマティスのスフィンゴミエリン合成酵素を同定し、その機能を解析することを目的としている。本年度は候補遺伝子を無細胞発現系によって発現させ、スフィンゴミエリン合成活性の検出を試みる計画であったが、新たに生じた業務等に時間を取られ十分に実施できなかった。一方、(1R,3R)-HPA-12の分解及び代謝については進展があった。スフィンゴミエリン合成酵素欠損HeLa細胞の培地中に添加された(1R,3R)-HPA-12は4時間経過後も全く代謝されなかったが、同細胞にクラミジア・トラコマティスを感染させた場合には、(1R,3R)-HPA-12の水酸基にホスホコリンが付加された化合物が出現した。この化合物は、野生型のHeLa細胞でもわずかに生成していた。即ち、セラミド様化合物である(1R,3R)-HPA-12はスフィンゴミエリン合成酵素によってセラミドと誤認されてホスホコリンが付加されること、クラミジア・トラコマティスの酵素はヒトのものと比べてセラミドの基質選択性が低く、より多くの代謝産物を作り出してしまうことが分かった。 (1R,3R)-HPA-12の結合タンパク質の探索を行うことでクラミジア・トラコマティスのスフィンゴミエリン合成酵素を同定する予定であったが、標的酵素によって代謝されてしまうことから、あまり適切なツールではないと考えられた。そこで、共同研究者にホスホコリンが付加すると考えられる二箇所の水酸基をメトキシ化した化合物の合成を依頼している。
|