研究実績の概要 |
本研究は、既知のスフィンゴミエリン合成酵素とは進化的に大きく異なると予想されるクラミジア・トラコマティスのスフィンゴミエリン合成酵素を同定し、その機能を解析することを目的としている。セラミド様化合物(1R,3R)-HPA-12は強い抗クラミジア活性を示す化合物である。当該化合物はクラミジア・トラコマティスのスフィンゴミエリン合成活性を阻害するとともに、同活性によって水酸基にホスホコリンが付加される。当該化合物の複数の立体異性体を用いた解析により、スフィンゴミエリン合成阻害活性と抗クラミジア活性の間に相関関係が認められたことから、スフィンゴミエリン合成阻害が抗クラミジア活性の原因であると考えられている。(1R,3R)-HPA-12に対する結合因子を探索することによりクラミジア・トラコマティスのスフィンゴミエリン合成酵素を同定できる可能性がある。この計画において、当該化合物が標的酵素に結合したまま長く代謝されないことが好ましい。そこで、本年度は共同研究者に依頼して当該化合物の水酸基をメトキシ化してもらい、これらの化合物の抗クラミジア活性について検討を行った。(1R,3R)-HPA-12の2箇所の水酸基(1位と3位)のうち、どちらにホスホコリンが付加されるのかは分かっていないため、それぞれをメトキシ化した。メトキシ化により抗クラミジア活性は著しく減弱し、特に1位にメトキシ基を導入した場合に抗クラミジア活性の減少が強い傾向があった。メトキシ化された(1R,3R)-HPA-12はいずれもクラミジアのスフィンゴミエリン合成酵素に認識されていない可能性が高く、この化合物を用いて結合因子を探索する戦略は有効ではないと考えられた。一方、遺伝子探索を進めた結果、6個目の候補遺伝子が見つかってきた。この遺伝子の解析を行うため、現在クローニングを進めている。
|