研究実績の概要 |
本研究課題では、超硫黄を介したシグナル伝達機構を明らかにし、超硫黄分子による多臓器間ネットワークの解明を目指している。本年度は、主に、①消化管内の超硫黄の病態生理学的意義の解明に関する実験を行った。超硫黄の消化管における生理学的役割を探索するために、CARS2ヘテロ欠損マウスおよび野生型マウスの糞便を用いて、腸内細菌叢を次世代シークエンサーにて解析した。数種類の腸内細菌がCARS2ヘテロ欠損マウスで変動が認められた。さらに、超硫黄の消化管における病態生理学的役割を探索するために、腸炎モデルとしてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルを使用した。具体的には野生型マウスおよびCARS2ヘテロ欠損マウスに1.5% DSSを7日間飲水させ,7日間通常の飲水に戻すことで、腸炎モデルを作製した。体重増減、および血便、下痢を評価した。まず、DSS大腸炎モデルにおけるCARS2の発現変動をqPCR法を用いて解析したところ、DSS大腸炎時にはCARS2の発現量が減少することが明らかとなった。加えて、SSip1による超硫黄イメージングにおいても腸管の筋層において、超硫黄産生量が減少したことが明らかとなった。現在、CARS2ヘテロ欠損マウスと野生型マウスのDSS大腸炎による体重減少や血便の程度を解析中である。 腸管で吸収された超硫黄は肝臓で代謝・貯蔵され、血中を介して心臓に供給される可能性が考えられる。実際に、肝臓では超硫黄量が豊富であることも報告されている。そこで、肝臓における超硫黄産生酵素(CARS2やCSE,CBS)をアデノ随伴ベクター(AAV)にて過剰発現またはノックダウンすることで、肝臓からの超硫黄の供給を変化させる。現在はプラスミドの作成を行なっている。
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