本研究課題では、超硫黄を介したシグナル伝達機構を明らかにし、超硫黄分子による多臓器間ネットワークの解明を目指している。本年度は、主に、超硫黄取り込み機構の解明に関する実験を行った。過剰な超硫黄分子投与による細胞死を指標にCRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを利用したスクリーニングを行い、超硫黄分子トランスポーターの候補遺伝子を同定し た。超硫黄分子トランスポーターの候補遺伝子中で、機能が明らかにされていないslc25a43に着目した。slc25a43はX染色体上の遺伝子であり、公共データベース(protein atlas)上では、全身の様々な臓器に普遍的に発現している。大腸や小腸では主に、enterocyteやパネート細胞に発現している。加えて、公共データベース上の炎症性腸疾患患者のトランスクリプトーム解析を再解析したところ、コントロールと比較して、クローン病患者や潰瘍性大腸炎患者でslc25a43の発現量が減少していることが明らかとなった。そこで、slc25a43の生体における役割を明らかにするために、iGONAD法(経卵管ゲノム編集)にてノックアウトマウスの作製を試みた。iGONAD法にて、slc25a43をコードする遺伝子を100bp程度欠損したマウス個体を得ることに成功した。現在、得られたマウスを繁殖させている。今後は、作製したslc25a43欠損マウスの解析を行い、slc25a43の生体での役割および超硫黄との関連性を明らかにしたい。
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