研究課題/領域番号 |
22K06633
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
堀江 俊治 城西国際大学, 薬学部, 教授 (50209285)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 温度感受性TRPチャネル / 非びらん性胃食道逆流症 / 炎症後過敏性腸症候群 / 内臓痛覚過敏 / 一次求心性知覚神経 / 粘膜型マスト細胞 / TRPM8 / TRPV1 |
研究実績の概要 |
新規炎症後過敏性腸症候群モデルマウスおよび非びらん性胃食道逆流症モデルラットの機能性消化管障害病態モデルを作製し、TRPV1の発現神経細胞の変化と免疫細胞の粘膜への動員について検討し、以下の結果を得た。 (1) 当研究室では2021年に炎症後過敏性腸症候群モデルを新規に開発した。すなわち、マウスにデキストラン硫酸ナトリウムを3日間自由飲水させ潰瘍性大腸炎病態状態を作製し、その後14日間で自然治癒させて炎症後過敏性腸症候群モデルを作製した。また、麻酔下ラットに前胃部を糸で結紮し、さらに幽門をネラトンカテーテルで被覆して幽門を狭窄させて腹部を縫合し、14日間飼育して非びらん性胃食道逆流症モデルを作製した。 (2) 病態モデルから消化管組織を部位別に摘出して凍結切片を作製し、TRPチャネル発現神経とマクロファージ、好中球、マスト細胞・好酸球が経日的に消化管組織のどの層に局在しているのかを免疫組織化学的に共焦点レーザー顕微鏡にて検討した。その結果、炎症時には結腸粘膜にマクロファージ、好中球、粘膜型マスト細胞、好酸球が観察されたが、炎症が収まると粘膜型マスト細胞のみが残存していた。また、粘膜型マスト細胞はTRPV1発現一次知覚神経線維の周りに集積していた。 (3) 炎症後過敏性腸症候群モデルの結腸粘膜を採取しフローサイトメーターでマスト細胞と好酸球の経日的変化を観察したところ、本モデルでは14日目においても結腸粘膜や粘膜下層に粘膜型マスト細胞が残存していた。 このように機能性消化管障害にはマスト細胞とTRPV1神経の経路が重要な役割を果たしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費申請書に記載した2022年度の研究計画はすべて実施することができた。おおむね順調に研究が進展した。また、そこから得られた研究成果は予想以上のものであった。この結果をもとに2023年度の研究を新たに展開していく。
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今後の研究の推進方策 |
病態モデルにおいて腹部疼痛過敏反応、摘出消化管平滑筋収縮・弛緩反応の異常亢進、in vivoにおける結腸運動の異常亢進がTRPチャネルを介して増感作しているか検討を進める。。 (1) 病態モデル動物において、TRPM8を介する疼痛反応を正常動物と比較検討する。病態モデルにおいて、TRPV1作動薬カプサイシン、TRPM8作動薬WS-12の結腸投与によって誘起される疼痛反応(腹部をなめる、腹部を伸ばすなどの行動反応の回数、痛みにこらえる無動時間)を測定することで内臓痛覚を捉える。これにより病態モデル動物個体における温度感受性TRPチャネルを介する痛覚過敏反応が明らかとなる。 (2) 病態モデル動物より摘出結腸標本を作製し、マグヌス装置にてそのin vitroでの消化管平滑筋張力を計測する。それぞれ消化管平滑筋標本にTRPチャネル作動薬を添加し、平滑筋の収縮・弛緩反応チャートを記録する。これにより消化管平滑筋張力における知覚過敏反応を捉える。 (3) 病態モデル動物において、TRPチャネル作動薬投与による消化管運動亢進を検討する。病態モデル動物において、FITCデキストラン法(小腸運動)・ビーズ法(結腸運動)・糞排出法(結腸直腸運動)を用いて覚醒下動物の消化管運動を測定する。これにより覚醒下の病態モデル動物個体における消化管運動知覚過敏反応を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の直接経費の使用はほぼ予定通りであったといえる。ただし、予定していた過敏性腸症候群モデル動物におけるTRPチャネルの免疫染色回数(動物の例数)が十分行えなかった。2023年度はこの検討から再開する予定である。また、研究成果の学術誌論文発表も遅れている。 2022年度繰越金額は実験用マウスと免疫染色用タイラマイド(TSA)を購入し、論文発表のために使用する。
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