研究課題/領域番号 |
22K06641
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 講師 (30710701)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エクソソーム |
研究実績の概要 |
【目的】感音難聴は、その多くで不可逆的である。この不可逆性をもたらす要因として有毛細胞死が挙げられるが、ヒトの有毛細胞を生検することはできない。したがって、有毛細胞死を早期に検知する生理学的指標を確立することが難聴治療に重要である。近年、細胞外小胞が疾患バイオマーカーとして注目されていることから、本研究では蝸牛器官培養系を用いて、薬剤誘導的に有毛細胞を障害し、その際の細胞外小胞について解析した。【方法】生後3日齢ICRマウスの蝸牛をセルカルチャーインサート上で24時間静置(pre-culture)した後、neomycin(アミノグリコシド系薬、1 mM)あるいはvehicleを曝露した。曝露48時間後の培養蝸牛を用いて、myosinVIIa(有毛細胞マーカー)について免疫染色した。また、同時間における培養上清中に含まれるCD9、CD63、CD81発現量をELISA法により測定した。さらに曝露後48時間後における培養上清から細胞外小胞を回収し、マイクロアレイ法により網羅的にmiRNAを解析した。【結果】Pre-culture後48時間における培養上清中の細胞外小胞マーカーは全て検出され、その発現量はCD81が最も多く、次いでCD63、CD9の順であった。Neomycin曝露後48時間において蝸牛全域で有毛細胞障害が生じた。また、同時間におけるCD63の発現は、障害された有毛細胞付近に多く観察された。Vehicle曝露群と比較して、neomycin曝露群の培養上清ではmiRNAの2倍以上あるいは半分未満となるmiRNAが多数確認された。【考察】以上の結果から、有毛細胞障害時では通常と異なるmiRNAを内包する細胞外小胞が放出されることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蝸牛器官培養上清からのエクソソームの回収方法が確立されたため、今後計画に沿って研究を進める段階である。
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今後の研究の推進方策 |
以下の検討から有毛細胞死の前になぜ蝸牛内でエクソソームが放出されるのかを明らかにする。 ・各細胞特異的マーカーの免疫染色やレポーターマウスを用いて、ネオマイシン処置後のCD63が、どの細胞を蓄積するか確認する。 ・採取したエクソソームに蛍光標識し、培養蝸牛に曝露する。一定時間経過後の培養蝸牛を観察し、エクソソームが取り込まれる細胞を同定する。 ・採取したエクソソームからsmall RNA溶液を調整し、網羅的sequence解析を行い、翻訳制御されるターゲットタンパク質の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね順調に進み、予測されるよりも研究費を節約できた。当初、計画案に加えて得られたエクソソームのプロテオーム解析を実施する予定としている。
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