研究課題/領域番号 |
22K06647
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
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研究分担者 |
高崎 一朗 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00397176)
藤井 一恭 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70452571)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | PACAP / PAC1受容体 / PAC1受容体拮抗薬 / 有機低分子拮抗薬 / 脊髄痒み伝達 / PACAP欠損マウス / PAC1受容体欠損マウス |
研究実績の概要 |
本研究では、脊髄掻痒伝達におけるPACAP-PAC1受容体シグナル伝達メカニズムを疼痛伝達と比較検討するとともに、新たに見出された掻痒疾患の皮膚症状形成に関与する末梢PACAP-PAC1受容体シグナルの重要性を解析するものである。 令和4年度は、主に乾癬モデルマウスの掻痒行動に対するPACAP特異的受容体(PAC1受容体)拮抗薬の効果を検討するとともに、PACAP欠損マウス、および各種PAC1受容体欠損マウスに乾癬モデルを適用した検証を行った。すなわち、イミキモドクリームの1日1回5日間以上の塗布を行うことで乾癬モデルを作製し、野生型マウスにおいては、我々の研究グループが開発した有機低分子PAC1受容体拮抗薬の外用の効果を、近年尋常性乾癬への適応も考慮されている外用JAK阻害薬(コレクチム軟膏:デルゴシチニブ軟膏)と比較した。 現在もさらなる検討を行っているが、PACAP欠損マウスにおいては掻痒行動抑制、皮膚症状改善・表皮厚肥化の抑制とともに、Th17系Tリンパ球の浸潤も抑制されていることが示唆された。一方、野生型マウスを用いた検討では、外用JAK阻害薬の外用は掻痒行動と共に表皮の厚肥化を抑制し、Th17系Tリンパ球の浸潤も抑制するが、PAC1受容体拮抗薬の外用は、掻痒行動は有意に抑制しないが、表皮の厚肥化およびTh17系Tリンパ球の浸潤をJAK阻害薬と同等レベルに抑制することが示された。 以上の結果から、末梢(皮膚)PACAP-PAC1受容体システムは、乾癬の皮膚病態形成に係るTh17系炎症応答惹起に重要な寄与をしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の最も重要な研究目的の一つは、掻痒疾患における末梢PACAP-PAC1受容体システムの重要性を検討することであったが、乾癬においてその重要性が確認されたことは、大きな研究の進歩と評価できるため。
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今後の研究の推進方策 |
現在主な検討を行っている乾癬マウスモデル以外にも、アトピー性皮膚炎マウスモデルを用いた検討も同様に進めて行く予定である。さらに、皮膚生検検討に使用可能なPAC1受容体抗体の作成にも目途が付き、今後はマウスモデルおよびヒト皮膚疾患におけるPAC1受容体の組織学的検討を本格的に進行させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度最後の支出が出張費であったため残額の予測がつかず、無理な予算消化は行わず、次年度に繰り越すこととした。残額(約12,000円)は次年度の物品費として使用予定です。
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