研究課題/領域番号 |
22K06654
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小菅 康弘 日本大学, 薬学部, 教授 (70383726)
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研究分担者 |
三枝 禎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50277456)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | p-クレジル硫酸 / p-クレゾール / 海馬 / CKD / 小胞体ストレス / 尿毒症 |
研究実績の概要 |
近年,慢性腎臓病 (CKD) は認知症の危険因子となることが指摘され,その病因に学習・記憶に重要な海馬での酸化ストレスの増加や小胞体の機能不全による小胞体ストレスが関与することが明らかにされつつある。CKDモデルマウスのひとつ左腎臓の2/3を摘出し、右腎臓を全摘出した5/6腎摘マウス(Nxマウス)を用いて、海馬領域における神経変性の有無ついて検討を行った。ストレス応答の増加が生じる右腎摘出後8週後のNxマウスでも神経変性の増加やシナプス構成タンパク質の減少は認められなかった。HPLC法によりNxマウスとコントロールマウスの海馬内のACh量を測定したが、顕著な差は認められなかった。尿毒素の一種であるp-クレジル硫酸は、腸内細菌によって産生されたp-クレゾールが体内で代謝されることで生成される。本年度は血液中及び脳内に蓄積するp-クレジル硫酸およびp-クレゾールをHPLC法により定量する方法を開発し、Nxマウスおよびコントロールマウスの変化を検証した。その結果、Nxマウスの海馬や大脳などの中枢神経系においてもp-クレゾールあるいはp-クレジル硫酸が増加すること、その変化は末梢血での変化とは独立して生じること見出した。 また、研究代表者が培養海馬神経細胞において小胞体ストレスを軽減することを報告しているS-allyl-L-cysteine (SAC)が、Nxマウスの腎機能や脳内ストレス関連因子の発現に及ぼす影響を検討した。SACの経口摂取は、Nxマウスで生じる血清尿素窒素(BUN)値や血清Creatinine (Cre)の増加を抑制するとともに、糸球体面積の増加や腎線維化を抑制した。さらに、SACはNxマウス海馬での小胞体ストレス関連タンパク質の発現増加を抑制した。以上のように、SACは腎保護作用を示すことで、海馬におけるCKD誘発性のストレス増加を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に企画したin vivo脳微小透析法から得た微量試料をLC/MS/MS法で分析するという戦略は、使用するサンプル量と所有する機器の感度の問題で測定法の改良が必要であることが判明した。そこで、新たに全脳(特定の脳部位に分画した)サンプルおよび血液サンプルを用いたHPLC法での測定法を開発し、本研究で着目する尿毒症物質であるp-クレジル硫酸の蓄積量に部位差があることが判明した。また、SACは腎保護作用を示すことで、尿毒症が誘発する海馬におけるERストレスの増加を抑制する作用を有することを新たに見出し、その内容は原著論文として投稿中である。さらに、研究代表者が保有する植物エキスの効果についても検証したところ、それらのエキスには骨代謝に影響を及ぼすことが示唆された。そこで、骨代謝に及ぼす影響についてもin vitroモデルを用いて精査し、特許出願をおこなった。以上の結果より、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
血液中に蓄積したp-クレジル硫酸やp-クレゾールは、腎臓や心血管系の傷害の促進や免疫系の抑制など生体に対してさまざまな悪影響を与え、死亡率の上昇に関与することが報告されている。また、研究代表者らはマウス海馬神経細胞由来HT22細胞において、p-クレゾールが小胞体ストレス依存的な細胞死を誘導することを見出している。次年度では、これらのin vitro尿毒症モデルを利用し、p-クレジル硫酸およびp-クレゾールが誘発する細胞死を抑制する化合物をスクリーニングするとともに、初代培養マウス海馬神経細胞を用いてその効果を検証する予定である。さらに、p-クレジル硫酸およびp-クレゾールが神経突起の形成や進展に及ぼす影響についても、組織または細胞レベルでのイメージングにより検証する予定である。さらに、本年度invivoモデルで効果を見出した化合物・エキスについてはその効果やメカニズムを病態モデルマウスを用いて精査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時に企画したin vivo脳微小透析法から得た微量試料をLC/MS/MS法で分析するという戦略は、採取可能なサンプル量が少なく、所有する機器の感度では測定が困難で、測定法の改良が必要であったため、既存の全脳サンプルを用いたHPLC法での測定法を改良し、本研究で着目する尿毒症物質を測定した。それに伴いLC/MS/MS法等で使用しなかった経費を次年度以降に繰り越し、測定法の開発を行う予定である。 また、支払いを見込んでいた投稿中の総説(1報)および原著論文(1報)の受理が遅れているため、予定していた論文掲載料は次年度以降の使用を計画している。なお、いずれの論文もRevise中である。
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