研究課題/領域番号 |
22K06655
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
間宮 隆吉 名城大学, 薬学部, 准教授 (70340297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ストレス / 動物モデル / 心的外傷後ストレス障害 / 治療薬 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
初年度は、独自に開発してきた心的外傷後ストレス障害(PTSD)モデルマウスについて、病態を神経科学的に解析し、新規候補化合物の薬効評価を開始した。 雌性前脳特異的コレシストキニン2受容体過剰発現マウス(4週齢)に対し、コミュニケーションボックス法を用いて、心理的ストレスをトラウマとして負荷した。その後ホームケージに戻し、3週間通常飼育した。7週齢時から主に認知機能を行動学的に評価したところ、恐怖条件付け試験で観察されるすくみ行動(freezing behaviors)が強く、PTSD様症状が認められた。8週齢時からセロトニン再取り込み阻害薬のパロキセチンを4週間経口投与すると、この症状が緩解されたが、溶媒投与群ではすくみ行動の亢進が持続していた。また、トラウマを負荷する前の海馬体積をMRI画像により比較検討したところ、両群間で差は認められなかったが、8週齢でPTSD様症状を示したマウスの海馬の体積は、正常(野生型)マウスと比べ減少していた。また、セロトニン受容体関連化合物に加え、カンナビノイド受容体関連化合物の作用についても検討を開始した。また、本研究に付随した成果について、特許申請を行うことができた。 一方、予備実験ではあるが、認知症モデルマウスで前脳のコレシストキニン量が正常マウスと比べて、減少している傾向を見出した。次年度は、本試験として進めるとともに、前脳コレシストキニンが、記憶機能(レベル)の指標となりうるか解析し、PTSDや認知症のバイオマーカーとしての可能性を評価したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PTSDモデルマウスに対する新規化合物の評価を始めている。PTSD治療薬のパロキセチンはこのモデルに対して有効性を示したが、セロトニン受容体関連化合物については期待した効果を見い出せなかった。そこで、機序の異なるカンナビノイド神経に着目し、カンナビノイド受容体関連化合物の作用についても検討を開始した。 一方、PTSD発症のバイオマーカー探索を開始した。予備検討であるが、認知機能障害モデルにおいて脳内コレシストキニンレベルが低下している可能性を見出した。次年度に続けていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
新規PTSD治療薬あるいは予防薬の開発に向けて、カンナビノイド受容体関連化合物の効果を検証していきたい。また、コレシストキニンが記憶障害だけでなく、PTSD発症のバイオマーカーとなりうるか、げっ歯類だけでなくヒト検体を用いて解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成が遅れたため、英文校閲費や投稿費などを執行できなかった。論文原稿は作成できているので、次年度の使用に生かしたい。
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