研究課題/領域番号 |
22K06660
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
住井 裕司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10612848)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 抗赤痢アメーバ活性 / フマギリン / 構造活性相関 / フッ素導入戦略 / 細胞毒性 / オバリシン |
研究実績の概要 |
研究計画に従い,フマギリンをリード化合物として誘導体合成を行い,抗赤痢アメーバ活性が強く,細胞毒性の低い創薬候補化合物の探索を行った。赤痢アメーバ活性と細胞毒性の構造活性相関を明らかにするため,まずアシル側鎖の変換に着目し,フマギリン誘導体であるTNP-470(武田薬品工業),Beloranib (Zafgen)をリード化合物として,フッ素導入中心とした種々の置換基を有する誘導体を合成して生物活性評価を行った。誘導体は,発酵法で得たフマギリンを加水分解してフマギロールを得た後,イソシアネートまたは桂皮酸構造をもつ化合物と反応させて合成を行った。TNP-470型の誘導体は30種合成して活性評価を行った結果,フッ素官能基の導入によって活性に変化が生じることや,置換位置によって抗赤痢アメーバ活性が変化することがわかり,フマギリンを超える抗赤痢アメーバ活性を示す化合物を見出すことに成功した。Beloranib型の誘導体は25種合成したが,置換基の有無による抗赤痢アメーバ活性にばらつきが見られたほか,細胞毒性を示す誘導体が多いことが明らかになった。合成した誘導体について計算化学を用いたドッキングスタディや電子分布を評価したところ,抗赤痢アメーバ活性を示す誘導体に一定の傾向があることが示唆された。 次に,フマギリンのイソプレン側鎖を標的として,フッ素を導入した誘導体を合成して活性を評価した結果,抗赤痢アメーバ活性の低下と細胞毒性の増加が見られ,イソプレン部が抗赤痢アメーバ活性に関与していることが示唆された。次に発酵法で得た3-デメチルオバリシンを用いて,3位水酸基を足掛かりにアシル化した誘導体を合成して活性を評価した結果,良好な抗赤痢アメーバ活性を示す誘導体を見出すことができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,抗赤痢アメーバ活性の構造活性相関情報がない中で,TNP-470とBeloranibをモチーフにしてフッ素導入に視点を置いた誘導体合成を行い,合計70種以上の誘導体を合成して活性評価を行った。アシル基部や側鎖イソプレン部など活性に関与する部分構造が徐々に明らかになっており,今後の分子設計へつながる情報が得られている。細胞毒性を示すかはアシル基の構造が関与する傾向があることがわかり,細胞毒性と抗赤痢アメーバ活性の分離につなげられることが期待される結果を得られている。また,抗赤痢アメーバ活性をもつ3-デメチルオバリシンの誘導体が得られていることから,4位だけでなく3位を標的とした誘導体開発が可能であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
フマギリンンのアシル基側鎖の構造が抗赤痢アメーバ活性に関与することが示唆されており,引き続き水酸基を足掛かりに,アシル化やエーテル化による誘導体合成を進めていく。また,フマギリンの4位メトキシ基の脱メチル化を検討し,4位を足掛かりにした誘導体合成を行う。 一方,フマギリンはメチオニンアミノペプチダーゼ2 (MetAP2)に結合することがわかっており,スピロエポキシド構造が結合に大きく関与していることが報告されている。そこで,次年度はエポキシドを開環した誘導体を合成して生物活性を評価する。ハロゲン求核種や,窒素・酸素求核種を用いた開環反応を行い,種々のアシル基と組み合わせた誘導体を合成して,エポキシドが抗赤痢アメーバ活性に与える影響を評価する。 また,4位水酸基を足掛かりに,シクロヘキサン環上へ直接フッ素官能基の導入を検討する。フマギロールを酸化してケトンに変換した後,フッ素化剤を作用させて隣接位へフッ素を導入して種々の誘導体を合成する。
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