研究課題/領域番号 |
22K06663
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
内田 俊平 香川大学, 医学部附属病院, 医員 (20791099)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 希少糖 / 腸内細菌叢 / 免疫制御 / D-タガトース |
研究実績の概要 |
本研究は各種希少糖による生体の免疫機能への影響について2つの視点から評価をするものである。一つは希少糖の免疫細胞に与える直接的な影響について評価し、もう一つは希少糖の摂取によって腸内細菌叢が変化し、この変化がもたらす免疫調整作用を評価する。 まず、希少糖が腸内細菌叢の変動を介する生体の免疫調整作用について評価を進める。この検討の前提となる、各希少糖が腸内細菌叢を変動させることについて再度確認をする。D-タガトース、D-アロース、D-アルロースの3つの希少糖(及び水コントロール、D-フルクトースコントロール)について、これらの水溶液を自由飲水させた実験動物(C57BL/6Jマウス、オス、投与開始は6週齢相当)より取得した腸内細菌叢データ(16SrRNA、V3-V4領域)を統合しQiime2パイプラインおよびLefSE解析により再解析した。更にこれと並行して、D-タガトースの長期投与による糞便中短鎖脂肪酸の濃度変化について、高速液体クロマトグラフィーを用いて濃度測定した。 腸内細菌叢の再解析においても、D-タガトースはクロストリジウム属を含む複数の細菌について有意にその存在比率を増加させている。Picrust2予測メタゲノム解析により、酪酸産生能が増大していることが示唆された。一方で、希少糖長期投与による糞便中有機酸解析では、短鎖脂肪酸であるn-酪酸濃度の上昇は認められず、むしろ乳酸やコハク酸の濃度上昇が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回のD-タガトース長期投与の実験において、当初の解析により期待された糞便中短鎖脂肪酸の増加が認められず、この点から進捗状況はやや遅れていると考えられる。 一方で、D-タガトースの投与は各便中有機酸濃度を変化させたことから、代謝の性質の異なる腸内細菌集団の相対存在割合の変化があったことは強く示唆される。(今回の糞便中有機酸分析と同時に腸内細菌叢解析はコスト面から実施していない。)便中乳酸濃度の上昇はビフィドバクテリウムの相対的な増加も示唆さる。一般に乳酸は腸内細菌により短鎖脂肪酸に分解されると考えられるので、更に次の段階へ腸内細菌叢が変化した後にクロストリジウムが優位となり酪酸濃度が上昇する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
D-タガトースの長期投与を行ったが、更に長期の投与が必要である可能性がある。D-タガトース投与量を増加させることも検討されるが、ヒトへ応用したときに現実的ではないために採用しない。酪酸の増加は認められなかったが、他の有機酸は大きく変動したことから、有機酸に限らず広く網羅的に希少糖代謝産物の変化を観測することを検討している。具体的には、本研究の後半に予定していたメタボローム解析を2年度目に早めて実施し、有機酸以外の免疫調整物質のスクリーニングを行う。各希少糖及びこれらの追加解析から抽出される物質を用いてin vitroで免疫細胞に対する直接的な影響を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の一部は学内研究費の一部を用いて行われたため、次年度使用額が生じている。更に2年度以降は大規模な解析も予定されているため、支出が多いと予測される。
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