研究課題/領域番号 |
22K06667
|
研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (30253470)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | イムノアッセイ / 機能性多糖 / ブクリョウ / タイソウ / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、ブクリョウ、タイソウ由来水溶性多糖を認識するモノクローナル抗体(mAb)の作製を中心に行った。各生薬の水性エキスから多糖画分を調製し、様々な多糖が含まれる多糖画分を免疫原としてマウスに感作を行った。その結果、ブクリョウ由来水溶性多糖を認識する抗体の産生を確認でき、常法通りハイブリドーマの作製、選抜を行った。タイソウ由来水溶性多糖を認識する抗体作成については、血中抗体価が低く、ハイブリドーマの作製を行わず、再度、免疫感作から実験を行った。その結果、前回同様、高い血中抗体価を得ることができなかった。そこで、本年度は、ブクリョウ由来水溶性多糖を認識するmAbの調製ならびにELISAの構築を重点的に進めた。複数のハイブリドーマの中で、選択性、反応性の高いmAbを産生するハイブリドーマを選抜し、クローニングを行い有望な株を得ることができた。クローニングの完了したハイブリドーマは大量培養し、続いて培養上清中に分泌されたmAbの精製を行うことで、十分な量のmAbを高純度で精製することに成功した。精製たmAbを用いて、交差反応性を調査したところ、ブクリョウ水性エキスのみを認識することを確認することができた。続いて、ELISAの標品として用いるブクリョウ由来水溶性多糖を得るために、精製したmAbを装着したイムノアフニティーカラムを作製し、本mAbが認識する多糖の精製を行った。その結果、期待通りにワンステップで抗原を精製することができなかった。現在、抗原溶出液の再検討を行い、高純度の抗原を精製する実験を行っている。また、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いた抗原の精製も並行して行い、目的とする高純度の標品の調製を実現する計画である。さらに、調製した抗原を標品としてブクリョウ由来水溶性多糖を簡便に分析可能なELISA等の免疫科学的分析法を確立する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していたタイソウ、ブクリョウから免疫原である水溶性多糖を調製し、モノクローナル抗体の作製を重点的に進めた。その結果、極めて高い特異性を有する抗ブクリョウ水溶性多糖mAbの作製に成功した。一方、タイソウ由来水溶性多糖を認識するmAbの作製は難航しており、今後、抗原の質、量を最適化することで、問題解決を図りたいと考えている。作製できたブクリョウ由来水溶性多糖抗体は、ブクリョウの品質評価法のツールとして活用できるものと考えており、今後ELISAの構築を目指す予定である。以上のように、本課題はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
<免疫化学的分析法の開発> ブクリョウ品質評価法の確立に関しては、既に開発に成功しているハンゲ由来水溶性多糖に対するELISAの確立に関する研究成果を参考に実施する計画である。ブクリョウ由来水溶性多糖に対するELISAでは、作製できたmAbが一種類であったことから、直接法によるELISAの開発を目指す計画である。構築したELISAについては、各種ブクリョウサンプルの定量を通じて、簡便性、信頼性などを見極める。さらに、ブクリョウ由来水溶性多糖を特異的に認識するmAbを用いた新規免疫染色法を開発する。様々な担体を用意し、各生薬由来多糖の分離を試み、最適な分離手法の確立を目指す。分離担体としてセルロールアセテート、アガロースやポリアクリルアミド等を用いて、その有用性を検証する。さらに、供試するサンプルの前処理法に関しても工夫を凝らすことで、多様な生薬成分の中から選択的にブクリョウ由来多糖の検出を実現したいと考えている。 <新規免疫化学的分析法を活用した多糖の解析> ブクリョウから単離した多糖をマウスに投与した後、多糖の吸収、代謝、薬物動態について、確立したELISAおよび免疫染色法を用いて解析する。以上の研究を通じて、本申請課題で開発する免疫化学的分析手法が生薬のみならず様々な試料に適用可能か否かを検証する。 <タイソウ由来水溶性多糖に対するモノクローナル抗体の作製> タイソウ由来水溶性多糖を認識するmAbの作製はについては、投与抗原量や精製した抗原の投与などを試すことで、質・量ともに十分な抗体産生を促し、その後、常法とおりmAbの作製、ELISAの構築などを進めていきたいと考えている。
|