研究課題/領域番号 |
22K06674
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
緒方 文彦 近畿大学, 薬学部, 准教授 (10581754)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 廃棄物バイオマス / 水質浄化剤 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,①廃棄物バイオマスの水質浄化剤への転換技術の確立および物理化学的特性評価,②有害重金属および難分解性有機化合物の吸着能評価,③廃棄物バイオマス由来水質浄化剤と水環境汚染物質との相互作用の機構解明を目的とし研究を実施している。 本年度は,廃棄物バイオマスとしてマンゴスチンの果皮に着目した。マンゴスチン果皮を加熱処理することにより,その物理化学的特性(電子顕微鏡写真,熱重量・示差熱分析,比表面積,細孔容積,表面官能基数など)の変化について評価した。 また,水環境汚染物質として有害重金属であるカドミウムイオン(Cd2+)をターゲットとし,吸着時に影響を及ぼす因子(温度,pH,吸着時間,共存イオンなどの影響)の同定を試みた。さらに,廃棄物バイオマス由来水質浄化剤と水環境汚染物質との相互作用の機構解明を目指し,結合エネルギーの測定および元素分析を実施し,より詳細な検討を行った。 本年度の実績としては,マンゴスチン果皮由来水質浄化剤の物理化学的特性を明らかとすることに成功し,処理条件の最適化に関する基礎的知見を獲得している。さらに,水環境汚染物質であるカドミウムイオンの吸着能およびその吸着機構の一部を明らかとすることに成功した。これらの基礎的知見は,循環型社会の構築を目指した廃棄物バイオマスによる水質浄化技術の開発に有用であると考えられる。さらに,本研究成果については,学術論文への掲載,学会での発表を実施済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,マンゴスチン果皮由来水質浄化剤によるカドミウムイオン(Cd2+)の吸着能に関する知見の獲得に成功している。 マンゴスチン果皮(MG)を500℃(MG500)もしくは1000℃(MG1000)で加熱処理した。その結果,MGと比較し,MG1000の比表面積は約14倍高値を示した。また,ゼロ電荷点(pHpzc)の値は,MG(4.6)<MG500(9.7)< MG1000(9.9)の順に高値を示した。カドミウムイオンの吸着量は,MG<MG500< MG1000の順に高値を示し,吸着時の最適pHは5であることを明らかとした。さらに,カドミウムイオンの吸着時における温度,吸着時間,共存イオンの影響に関する知見の獲得にも成功し,MG1000を用いたカドミウムイオンの吸着時における条件の最適化にも成功した。また,結合エネルギーの測定および元素分析の結果より,カドミウムイオンはMG1000の表面に吸着していることを明らかとしている。最後に,MG1000に吸着したカドミウムイオンの脱着能を評価した結果,硝酸を用いた場合に約99%カドミウムイオンを回収できることを明らかとし,MG1000の繰り返し使用の可能性を示すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,廃棄物バイオマスとしてマンゴスチンの果皮に着目し,加熱処理条件の最適化に関する知見の獲得に成功した。さらに,新たに創製した水質浄化剤の物理化学的特性およびその水環境汚染物質の一つであるカドミウムイオン(Cd2+)に対する吸着能についても明らかにすることができた。来年度は本研究課題の最終年度にあるために,これまで得られた知見を基に,包括的な研究を進める予定である。 具体的には,これまで得られた基礎的知見を基に,実用化を指向した研究を展開する予定である。さらに,廃棄物バイオマスの物理化学的特性を網羅的に評価することにより,水環境汚染物質との相互作用の有無およびその詳細な機構解明に関する研究に着手する。ここで得られる研究成果は,開発途上国を中心に水処理システムの構築に寄与でき,廃棄物バイオマスのリサイクル技術の確立に貢献できることから,循環型社会の構築にもつながると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度経費として計上していた旅費の執行が行われず,物品費に関しても十分な予算が確保できたために,当初予定していた執行額に至らなかった。なお,次年度に関しては,本年度得られた知見を基に,当初の研究実施計画に従い研究を進めるとともに,得られた研究成果を積極的に学内・学外発信していく予定である。次年度使用額に関しては,実験遂行時に掛かる物品費および旅費での執行を予定している。
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