研究課題/領域番号 |
22K06677
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 明 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50300893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ユビキチン化修飾 / 脱ユビキチン化酵素 / ユビキチン添加酵素 / 細胞間接着 |
研究実績の概要 |
タンパク質翻訳後修飾反応であるユビキチン(Ub)化修飾反応がどのように「細胞間接着維持」を制御しているかを明らかにするために、脱ユビキチン(Ub)化酵素USP47の阻害剤として見出した放線菌代謝産物Chloropeptin(ChPTN)が十分量必要である。そこで、ChPTN精製方法の高効率化を図ったところ、従来法と比較して高純度のChPTNを高収量が得られる新たな精製方法を確立することに成功した。 ChPTN処理によってUb-プロテアソーム経路による代謝が促進される分子として見出した細胞間接着関連分子p120カテニンの被Ub化修飾の有無やその脱Ub化反応へのUSP47の関与を検討した。その結果、確かに、p120カテニンはLys48結合型Ub鎖の付加修飾を受けること、ChPTN処理およびsiRNAノックダウン法によるUSP47の不活性化は付加Ub鎖レベルの上昇を引き起こすこと、組換え型USP47がp120カテニン上のUb鎖を消化できることなどを見出した。すなわち、p120カテニンがUb-プロテアソーム経路の基質であり、かつUSP47によってそのUb化修飾レベルが制御されていることが明らかとなった。さらに、p120カテニンの欠失変異体などを利用して被Ub化修飾部位の絞り込みを行ったところ、分子のC末端側の領域にUb鎖が付加している可能性が強く示唆された。 ChPTNによるp120カテニンレベル低下の意義について、下流シグナルへの影響を調べることで検討した。その結果、ChPTN処理したA549細胞では、アクチンストレスファイバー形成の促進ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ-9遺伝子発現の亢進が見出され、間葉系細胞様の形態変化がUSP47阻害によって誘導されることが確かめられた。一方、αおよびβ-カテニンなどのE-カドヘリン結合分子の発現はChPTN処理によって影響を受けなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標の1つである「細胞間接着維持へのUSP47の関与メカニズムの解析」については、被Ub化修飾部位が存在するp120カテニンの分子内領域をかなり絞り込むことができている。次年度の解析にて、候補となるLys残基の点変異体を活用することで具体的な被修飾残基の同定が可能な段階まで進展している。 また、当初、研究遂行に必要なChPTNの確保は小さいながらも問題点として考えていたが、改良型ChPTN精製法の確立によって、十分量のChPTNを確保することに成功したため、問題点の解消に至った。これによって計画として挙げていた様々ながん細胞を用いた「細胞間接着維持を標的としたがん治療法の開発」などの検討が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
p120カテニンの被Ub化修飾部位の同定後は、Ub化修飾を触媒するUb添加酵素の同定を進める。そのために、現在、E-カドヘリンのUb化修飾を担うとされているUb添加酵素HAKAIおよびUSP47と結合するとされているUb添加酵素SCF(β-TRCP)の遺伝子を単離し、動物細胞発現系を今年度の解析にて構築した。今後は、まず上記2酵素のp120カテニンのUb化修飾への関与に焦点を当てて解析を進める。 また、引き続き、p120カテニン以外のChPTN処理によって発現レベルが低下する細胞間接着関連分子についても探索を進め、細胞間接着維持とUb-プロテアソーム経路との関係の解明を目指す。
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