研究課題/領域番号 |
22K06687
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
橋元 誠 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (80552893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生合成 / 糸状菌 / 二次代謝産物 / フラビン依存酸素添加酵素 |
研究実績の概要 |
糸状菌由来フラビン依存酸素添加酵素(FMO)は、ユニークな反応を行う酵素として注目されてきている。一方、その機能開拓は、基質の酸化とフラビン還元の機能を両立させる必要があるために困難が伴う。本研究は、機能開拓が難しいscFMOを対象として、計算化学に基づいた活性に重要なアミノ酸残基の予測、in vitro解析の併用による機能同定と、単成分系FMOの二成分系FMOへの改変により機能開拓を目指す基礎研究と位置づけできる。本研究ではE. variecolor由来asteltoxinの生合成に関与するFMO(AstE)の機能同定と反応機構の解明、機能拡張を目指した。AstEは、asteltoxin生合成において、2段階のエポキシ化に関与することが予測される。この2つのエポキシ化段階において、関与するアミノ酸残基に違いがあるかについても調査する。 今年度はin vitroによる活性評価系の確立を目指した。大腸菌と酵母のコドン使用頻度に最適化した人工遺伝子大腸菌とメタノール資化酵母の発現系について検討した。大腸菌の発現系ではタンパク質の発現が確認できなかったことから、酵母への発現系に切り替えて検討する。 また、計算化学ソフトMOE(モルシス社)を利用したAstEの立体予測と、その結果に基づいて作成した点変異酵素の活性評価から、活性に重要なアミノ酸残基について推定した。AstE と補酵素FAD、推定中間体のドッキングシミュレーションを行い、FMOによるエポキシ化部分と補酵素の距離が近いモデルを選抜し、基質に近い酵素(活性中心)のアミノ酸残基を調査した。その結果、複数のアミノ酸残基の候補が上がった。なお、AstEは、2つの異なる生合成段階を酸化することが予想されたことから、それぞれの推定中間体について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vitroによる活性評価系の構築は進捗が遅れている。大腸菌を用いた発現系では、一般的に利用されるヒスチジン融合タグに加えて、発現や可溶性を促進させるタグを融合させたが、目的タンパク質の発現には至っていない。そこで、宿主をメタノール資化酵母に置き換えてAstEの発現を行う予定である。発現プラスミドの入手までに時間を要したが、構築した発現プラスミドをお用いて、現在、形質転換体の作成を試みている。 AstEのモデリング解析では、既知構造のFMO(3RP8、同一残基18%)をはじめとする3種類のFMOをそれぞれ鋳型にホモロジーモデリングを行い、AstEの立体構造を予測した。その後、予測されたモデル構造と補酵素FAD、ヘキサエン中間体2の ドッキングシミュレーション(DS)を行った。FAD のC4a 位と中間体2 や4 の酸素原子導入部位(C-4、C-6、C-7)の距離が5Å 以内のモデルを選抜した。候補モデルについて中間体や補酵素とAstE間の相互作用を評価したところ、基質と隣接するアミノ酸残基は疎水性を示した(M58, W217,F240, G327 )。また、補酵素とR115、E42間で相互作用が予想された。同様に、テトラエン中間体4に対するDSを行い、相互作用等を調べた結果、中間体2の時と同じアミノ酸残基との相互作用が確認された。さらに、網羅的変異解析を行った結果、上記の残基に加えて、AstEのG19やG20、H44、G314、G325も活性に関与する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro発現系の構築は、まず、メタノール資化酵母の形質転換体の作製を早急に行い、融合AstEの発現を行う。発現用のプラスミドは複数入手できたため、分泌型のタンパク質として活性を確認するとともに、菌体内に蓄積する発現系も構築して、入手しやすい方法を検討する。本系では、複数のプラスミドが導入された形質転換体が得られる可能性があることから、抗生物質濃度が高い条件で選抜し、複数の形質転換体を取得する。活性測定法については、すでに入手済みのヘキサエン中間体2と補酵素FAD、精製酵素を含む評価系により温度やpHを調べていく予定である。 活性が確認できたら、変異酵素の活性についても検討を試みていく。前年度にモデリング解析で活性に重要なアミノ酸残基について複数の候補が得られていることから、これらのアミノ酸残基を変異させた酵素を取得し、活性を評価することで、活性との関係性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に予定していた酵素活性を評価するための試薬の購入と分析用試薬の購入が少なかったことから、当初の予定金額を次年度に活性評価系を構築するときに利用する。
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