研究課題/領域番号 |
22K06694
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 宗典 東北大学, 大学病院, 特任講師 (70746841)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電子的患者報告型アウトカム(ePRO) / 電子カルテ連携 / 在宅介護 / 臨床研究 |
研究実績の概要 |
本研究開発課題においては、超高齢化社会を迎えるこれからの日本社会で、課題となっている在宅医療のリソースの効率配分について、解決策を検討する。この課題解決のためには、患者情報のデジタル化が必須の要件でなる。しかし、既存の電子カルテシステムには、日常的な患者の主観情報や身体所見を、デジタル化されたデータとして収集する機能は標準仕様としては備わっていない。研究者は、臨床研究で既に広く活用されている電磁的患者報告型アウトカム(electronic Patient reported- outcome:ePRO)データ収集システム(以下、ePROシステム)に着目した。在宅医療の現場に、ePROシステムを転用し、電子カルテシステムとのデータ連携を通じて、①患者の予後改善効果、②在宅医療サービスの質の向上、③リソースの効率配分の三つについて探索する臨床研究を立案した。 多施設前向き観察研究として、都内の2つの在宅医療実施機関において、ePROシステムを用いた遠隔モニタリングが患者予後の改善に有効かどうか、また、医療者や介護者の負担が軽減されるか、についてヒト指針下の臨床研究として実施中となる。2022年9月28日に東北大学の倫理審査委員会において研究実施計画・実施許可の承認が得られ、臨床研究の登録を完了(UMINUMIN000049787)し、2023年4月より症例登録を開始した。現在、実施医療機関として選定した2施設で症例登録が進められている。ePROシステムについては、実臨床の現場での運用が1年を迎えつつあり、症例登録、アラート設定、アラートメール 受領からの医療体制の対応までの体制は整いつつある。電子カルテとのデータ連携については、各実施医療機関の電子カルテの仕様等、制約もあり、現在調整中となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、無作為化臨床試験として実施予定であったが、これまで、在宅医療においてePROシステムと電子カルテを連携させた先行する報告については知見が乏しく、今回の研究では、実現可能性を検討するために、前向き観察研究を実施することして研究デザインを変更した。研究デザインの変更に伴い、当初予定していた単施設での臨床試験から、複数施設を対象とすることとし、また、症例数についても増加することとした。 研究実施計画書の策定・研究実施施設での倫理審査および臨床研究登録は予定通り進み、2022年9月28日に、東北大学倫理審査委員会において研究実施計画・実施許可の承認が得られ臨床研究登録も完了した(UMINUMIN000049787)。2023年3月までに、二つの在宅医療実施機関において、研究の実施について許可されている。研究支援体制については、東北大学病院臨床試験データセンターに業務委託し、モニタリング、統計解析業務について必要な手順書・計画書が作成済みである。データマネジメント業務は株式会社スーザックに委託し、EDCアカウントユーザーの管理、データレビュー、中央データモニタリング計画等についても体制を整えた。研究で利用するePROシステムの開発も2023年3月に完了し被験者のリクルートを開始し、2024年4月26日に第一症例が登録された。以降、2つ目の実施医療機関においても、9月10日に症例の登録を開始している。 合計140名の研究参加者の症例登録を予定中。老々介護のためデータ入力手段が無い患者や、身寄りがなく本人も認知症があり指針に規定する適切な同意の取得に課題があり症例登録が遅延している。しかし、実臨床の現場での運用が1年を迎えつつあり、症例登録、アラート設定、アラート受領からの医療体制の対応までの体制は整いつつある。本研究に関連して現在までに、2編の医学論文を公表している。
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今後の研究の推進方策 |
合計140名の研究参加者の症例登録を進めているが、老々介護のためデータ入力の手段を有していない患者や、また、身寄りがなく本人も認知症があり指針に規定する適切な同意の取得に課題があり症例登録が遅延したため、研究計画において症例登録期間を半年間延長し、2023年4月末までを症例登録期間としている。 在宅医療の診療に際してのePROシステムの運用については、症例登録、アラート設定、アラート受領からの医療体制の対応までの体制は整いつつあり、実際のイベント発生の予防効果に必要な情報も集まりつつある。 電子カルテとのデジタル連携については、ePROシステムと、各医療機関との間の電子カルテ連携についてAPIの開発を実行する予定しているが、医療機関側の制約があり、現在も調整中となっている。診療に際して在宅の情報をePROシステムから事前に収集し、訪問診療時に活用する仕組みは整っていることから、研究資金との兼ね合いを考慮しながら実装の可能性を模索中である。 2024年度には、全ての登録症例が1年間の観察期間に移行する。症例在宅医療現場でのePROシステムの運用拡大とデータ連携の改善を行う一方で、第3四半期までの観察期間のデータを用いて、本研究課題の結果の分析と論文の執筆を行う。その際に、ePROシステムを用いた遠隔モニタリングの標準化と普及、また、アラート閾値設定に関する機械学習の手法の導入について、新規の研究の立ち上げについても予定する。関連学会において、医療・介護業界への普及啓発活動を行うとともに、今後の展望に関する研究提言の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ePROシステムと電子カルテ連携において、実施医療機関の電子カルテの仕様と連携方法について課題がありその調整のため予算執行の際して調整が必要となっているため。
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