研究課題/領域番号 |
22K06698
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高野 幹久 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20211336)
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研究分担者 |
川見 昌史 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20725775)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺胞マクロファージ / ペプチドトランスポーター / 自然免疫応答 / 肺胞上皮細胞 / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
肺胞内には様々な免疫応答システムが存在し,特にマクロファージは重要な役割を担っている。本研究では,肺胞マクロファージの自然免疫応答について,バクテリア由来ペプチドの細胞内取り込みに関わるペプチドトランスポーターPEPT2との関係を中心に解析することを第一の目的とした。また,バクテリアの感染による炎症は間質性肺炎や肺線維症へと進行する危険性があり,その過程には肺胞上皮細胞の上皮間葉転換が関与する可能性がある。そこで肺胞マクロファージから分泌される液性因子と肺胞上皮細胞の上皮間葉転換の関係について解析することを第2の目的とした。令和4年度の成果は以下のとおりである。 1)ラット肺胞マクロファージを用いた検討 ラット肺から単離した肺胞マクロファージにおいてPEPT2のmRNA発現を確認した。またWestern blottingによりPEPT2タンパク質の発現も確認した。さらに,PEPT2基質である蛍光標識ペプチドβ-Ala-Lys-AMCA を用い,β-Ala-Lys-AMCA取り込みのpH依存性やPEPT2阻害剤による取り込み阻害効果から,肺胞マクロファージにおいてPEPT2が機能していることを見出した。 2)ラット肺胞マクロファージ由来培養細胞NR8383を用いた検討 実験動物数を抑えるため,次にNR8383細胞を用いて同様の検討を進めた。その結果,NR8383細胞においてもPEPT2のmRNAおよびタンパク質が発現していること,β-Ala-Lys-AMCAのNR8383細胞内への取り込みはPEPT2を介することを明らかにするとともに取り込み特性の解析を進めた。従って,NR8383細胞は,肺胞マクロファージにおけるPEPT2の発現・機能解析に有用な培養細胞と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット肺から単離した肺胞マクロファージやラット肺胞マクロファージ由来培養細胞NR8383において,ペプチドトランスポーターPEPT2が発現・機能していることを明らかにすることが本研究全体の出発点となるが,期待通りPEPT2の発現・機能を確認することができた。また肺胞マクロファージにおけるPEPT2介在性輸送の特性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
NR8383細胞においてPEPT2が発現・機能していることが明らかになったので,β-Ala-Lys-AMCA取り込みに対するバクテリア由来ペプチド(iE-DAP,Tri-DAP)の影響を解析し,これらペプチドがPEPT2介在性に輸送される可能性について検討する。また,細胞をバクテリア由来ペプチドで処理し,炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-αの細胞内発現や細胞外放出に対する影響について検討し,肺胞マクロファージにおいてバクテリア由来ペプチドによって自然免疫応答が起こるかどうか検討する。さらに自然免疫応答反応に対するPEPT2阻害剤の影響についても検討し,バクテリア由来ペプチドによる肺胞マクロファージの自然免疫応答に対するPEPT2の役割について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた試薬の納品に予想以上に時間がかかるなどしたため若干研究が遅延し、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、今後の研究の推進方策に従って使用する予定である。
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