研究課題/領域番号 |
22K06719
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石川 雅之 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (40824561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中枢移行 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
薬剤性脳症等の中枢神経障害の報告がある薬物の血清中および脳脊髄液 (髄液) 中濃度の測定系の確立を行なった。測定にはHPLC-UV法を用いた。その結果、血清検体では薬物濃度1.0-100.0 μg/mL、髄液検体は1.0-50.0 μg/mLの範囲で直線性が確認され、真度は許容範囲内であった。日常診療で検査のために採取した血清および髄液の残液を用いて薬物濃度を測定することを想定して検体保管後の安定性について検討を行なった。具体的には、検体採取後に冷所(4℃)で最長1週間程度保管される可能性があるため、1週間冷所保存した検体の安定性を確認した。その結果、1週間冷所保存後の血清検体中の当該薬物のピーク面積は保存前と比較して13.7-17.3%の減少を認めた。髄液検体においては、保存前の薬物濃度によらず冷所保存1週間後に当該薬物のピークが検出されなかった。-20℃で約10ヶ月間凍結保存した検体を使って長期凍結保存による安定性を検討した。その結果、血清検体では、当該薬物のピーク面積は保存前と比較して30%以上低下し、髄液検体では当該薬物のピークが検出されなかった。以上より、血清検体は-20℃による長期間凍結保存により安定性が保たれないことが示された。髄液検体は、冷所保存・-20℃による凍結保存いずれも安定性が著しく悪いことが示された。当該薬物の血清および髄液中濃度測定のためには、検体採取後から濃度測定までの保管条件についてさらなる検討が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬剤性中枢神経障害の報告のある薬物の血清および髄液中濃度測定方法の確立を行なったところ、冷所保存および-20℃による凍結保存をした際の当該薬物の安定性が悪いことが明らかとなった。臨床検体の薬物濃度測定の実施の前に、保管条件についてさらなる検討が必要となったために研究の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
血清および髄液の保管条件の検討を早急に行い、臨床検体の薬物濃度測定を行う予定である。当該薬物の安定性が損なわれないという観点だけでなく、臨床現場で実現可能な保管方法を模索して現実的な研究実施方法にすることで研究の推進を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では薬物濃度測定について外注での測定を想定していたが、より多くの検体を測定するために自施設での測定方法の確立に切り替えて検討を進めている。外注に関わる費用が不要となり次年度使用額が生じた。次年度使用額は引き続き薬物濃度測定方法の確立および臨床検体の薬物濃度測定に使用する予定である。
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