研究課題/領域番号 |
22K06724
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡田 直人 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (30623269)
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研究分担者 |
石澤 啓介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60398013) [辞退]
座間味 義人 岡山大学, 大学病院, 教授 (70550250) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / リアルワールドデータ / irAE / 間質性肺炎 / ウイルス感染 |
研究実績の概要 |
肺がん患者は他のがん種よりも薬剤性間質性肺炎のリスクが高いことが知られている。これまでに、電子カルテデータを用いて、肺がん患者における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による間質性肺炎のリスク因子を同定してきた。そこで本年度は保険者由来レセプトデータを用いて、ICIによる間質性肺炎のリスク因子について解析を進めた。EGFR-TKIは肺がん患者において間質性肺炎を引き起こす。しかし、ICIとEGFR-TKIの治療順序が間質性肺炎のリスクを変動させるかについては議論されていない。そこで、EGFR-TKIの使用順序がICIによる間質性肺炎発症に与える影響についてレセプトデータを用いて解析を行った。その結果、EGFR-TKIの前使用はICIの間質性肺炎のリスクを上昇させない可能性が示唆された。一方でICI使用後にEGFR-TKIを使用した場合は、間質性肺炎のリスクが上昇することが示された。以上の結果は、肺がん患者においてICIとEGFR-TKIを使用する場合は、その使用順序によって間質性肺炎のリスクが変動する可能性が示唆された。 ICI治療において、ウイルス感染が活性化する症例が報告されている。これまでは、ICIによるウイルス感染の活性化は、ICIによる有害事象対策のための免疫抑制薬の影響と考えられていた。しかし近年、ICIによる免疫賦活作用によりウイルス感染が顕在化するメカニズムが提唱され始めた。そこで有害事象自発報告データベースを用いて、ICIによるウイルス感染の発症について解析を開始した。その結果、ICIによるウイルス感染は免疫抑制薬非依存的に発症する可能性が示唆された。現在はその詳細なメカニズムについて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、複数のリアルワールドデータを用いて解析し、ICIによる間質性肺炎、重症筋無力症のリスク因子について同定することに成功した。これら結果は、ICIの安全な治療を遂行するうえで重要な知見である。さらに現在は、未だ不明な部分が多いICIとウイルス感染との関連についてリアルワールドデータを用いた解析に着手した。このように、本研究は当初の計画通り、複数のリアルワールドデータを用いることで、ICIの致死的有害事象回避法の構築に向けたエビデンスを明らかにすることができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析を行っているICIとウイルス感染との関連について、有害事象自発報告データベースを用いた解析を継続し進めていく。さらに、より詳細な患者データを収集するために、医療機関由来レセプトデータを使用して、ICIとウイルス感染との関連について解析を行う予定である。ICIとウイルス感染との関連は未だ未開拓の領域であり、本解析を推進することで、新たなエビデンスの構築に繋がると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の異動に伴い研究環境の構築が必要になった。また、今年度はフリーのデータベースを用いた解析を中心に行ったため、使用額が変更となった。来年度は医療機関由来レセプトデータの購入を行う予定である。
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