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2023 年度 実施状況報告書

SGLT2阻害薬による心外膜脂肪への効果とその機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06725
研究機関大分大学

研究代表者

高野 正幸  大分大学, 保健管理センター, 准教授 (60897057)

研究分担者 近藤 秀和  大分大学, 医学部, 助教 (90724170)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード心外膜脂肪 / SGLT2阻害薬 / 心房細動 / 心不全
研究実績の概要

近年、心房細動(Atrial Fibrillation : AF)の原因について、心外膜脂肪組織(Epicardial Adipose Tissue : EAT)との関連が大きな注目を集めている。EATは心筋に直接付着する内臓脂肪の一種であり、不整脈基質(不整脈を惹起する素因)の形成に深く関与することが多くの研究より示されている。他方、ここ最近においてSGLT2阻害薬が心不全治療薬として用いられるようになったが、さらに新規AF発症のリスクを低減させることも明らかとなった。その理由の一つとしてEATの量的・質的変化が挙げられており、実際に臨床所見として画像上、同薬投与患者はEAT量が有意に減少するとの報告が見られる。このようにSGLT2阻害薬はEATに対して直接的に影響を与えている可能性が高いと考えられるが、現状、詳細な生理的メカニズムは不明である。本研究では脂肪前駆細胞に焦点を当て、SGLT2阻害薬がEATに対して及ぼす効果を検討する。
現在、我々は本学心臓血管外科学講座と共同で「ヒト心血管・脂肪組織を用いた心血管イベントの発症予測とそれに基づく最適な治療法の開発のためのコホート研究」を進めており、心臓外科手術を受ける患者から余剰部分のEATを採集している。それらより抽出した脂肪前駆細胞をSGLT2阻害薬投与下で脂肪細胞へと分化させ、遺伝子やタンパク質がどのように変動するか観察を続けている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに我々は脂肪細胞の分化・成熟と炎症に関わる分子(具体的にはPPAR・PLIN2・CEBPA・FABP4・レプチン・アディポネクチン・TNF・インターロイキン・ケモカインレセプターなどそれぞれのファミリーも含めて)をリアルタイムPCR法によって評価した。また、心筋細胞との共培養システムを用い、心筋側が受ける酸化ストレスが軽減するかを検証した。結果、SGLT2阻害薬の投与によって心外膜脂肪細胞は成熟が抑制されると共に一部の炎症性サイトカイン分泌量も減少することが確かめられた。また、心筋細胞株(iPS由来)との共培養実験からそれらの脂肪細胞は心筋側へ与える酸化ストレスを軽減させることが示された。さらに実際の臨床所見とも関連しており、他の糖尿病治療薬(DPP4阻害薬など)内服患者と比較してSGLT2阻害薬内服患者ではEAT中のIL6遺伝子発現が有意に低下していた。現在、これらの結果は一つの論文として海外の学術雑誌で公開されている。

今後の研究の推進方策

今後、どのようなシグナル経路が活性化されているのかを見るべく、遺伝子発現マイクロアレイによる網羅的解析も検討中である。また、SGLT2阻害薬内服患者とそれ以外の糖尿病治療薬(DPP4阻害薬など)内服患者同士でEATの線維化度合いを比べる。可能であれば肥満モデル動物を用い、SGLT2阻害薬がin vivoでEATの量と質を改善するかを検証する。各成果は日本循環器学会や日本不整脈心電学会などで報告し、最終的には論文化することを目指している。

次年度使用額が生じた理由

当初、タンパク発現量を評価する予定であった遺伝子の数を多く見積もっていたが、実験の結果から一部で良いことが判明し、不要なELISA(キット)の購入を回避することが出来たため。また、2023年9月に海外(英国)で開催される国際学会(欧州心臓病学会)での発表を予定していたが、参加が難しくなり、旅費としての分が不使用となったため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Empagliflozin Suppresses the Differentiation/Maturation of Human Epicardial Preadipocytes and Improves Paracrine Secretome Profile2023

    • 著者名/発表者名
      Takano Masayuki、Kondo Hidekazu、Harada Taisuke、Takahashi Masaki、Ishii Yumi、Yamasaki Hirochika、Shan Tong、Akiyoshi Kumiko、Shuto Takashi、Teshima Yasushi、Wada Tomoyuki、Yufu Kunio、Sako Hidenori、Anai Hirofumi、Miyamoto Shinji、Takahashi Naohiko
    • 雑誌名

      JACC: Basic to Translational Science

      巻: 8 ページ: 1081~1097

    • DOI

      10.1016/j.jacbts.2023.05.007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Empagliflozin suppresses human epicardial pre-adipocyte differentiation/maturation and improves paracrine secretome profile.2023

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Takano, Hidekazu Kondo, Hirochika Yamasaki, Masaki Takahashi, Taisuke Harada, Yumi Ishii, Yasushi Teshima, Kunio Yufu, Shinji Miyamoto, Naohiko Takahashi
    • 学会等名
      第87回 日本循環器学会学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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