研究課題/領域番号 |
22K06726
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山本 聡 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10588479)
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研究分担者 |
小笠原 徳子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00438061)
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RSV / HSPG / COG4 / RGP1 |
研究実績の概要 |
ヒトRSウイルス (human Respiratory Syncytial Virus; hRSV)は免疫力が弱い乳幼児や高齢者に、下気道炎などの重症呼吸器疾患を引き起こすウイルスである。抗ウイルス薬・ワクチンは開発中であるがhRSVはRNAウイルスであることから、これらの治療法に対して耐性をもつ変異ウイルスが出現するリスクが極めて高い。 本研究では、ウイルスタンパク質を標的とした従来の創薬とは異なるアプローチによる抗hRSV薬の開発を目指し、hRSVが宿主細胞を利用して増殖するというウイルス特有の性質に基づき、宿主タンパク質を標的としてウイルスの増殖を阻害する新規創薬コンセプト (宿主標的治療)をhRSVへ応用するための基礎的知見を得ることを目的とした。 3年にわたる研究計画の2年目 (2023年度)は、初年度に同定した宿主因子の機能解析を試みた。CRISPR-Cas9を用いてゲノムワイドなスクリーニングをした結果、へパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の生合成に関わるB3GAT3, SLC35B2, ゴルジの品質管理に関与するCOG4や他の因子としてRGP1、UNC50が同定できた。これら因子のKDやKO細胞を樹立して、解析を行った結果、RSVの感染にはHSPGが重要であることや、RGP1が複製に関与する可能性が示唆されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSPGの合成に関与するSLC35B2とB3GAT3のKO細胞および遺伝子を補完したrescue株を樹立した。これらの細胞を用いて解析をおこなった結果、RSVの接着に関与することや,hMPVの侵入にすることがわかった。現在、これらの細胞をもちいて詳細な解析を進めており、近日中に論文を投稿をできる状態にある。 また他の候補因子として、COG4, UNC50, RGP1はsiRNA導入によるKD細胞では、感染性RSV粒子の産生がみとめられた一方で、KO細胞ではRGP1のみわずかな複製の低下が認められ、KD細胞とKO細胞間での矛盾が認めらている。今後はKD細胞およびKO細胞の両者で共通しているRGP1に着目し、RSVの複製過程との関連を詳細に検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度 (2024年度)はまずHSPGとRSVに関する論文を出版することに注力する。あわせて候補因子RGP1の機能解析を行う予定である。複製を定量する条件の検討や必要な試薬細胞などはすでに確立しており、速やかに解析できる状態である。
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