研究課題/領域番号 |
22K06732
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
藤田 健一 昭和大学, 薬学部, 教授 (60281820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レンバチニブ / 体内動態 / 遊離形血漿中濃度 / 遺伝子多型 / メタボロミクス / 肝細胞がん |
研究実績の概要 |
レンバチニブを投与する切除不能進行・再発肝細胞がん患者を対象として、効果や毒性に関与する薬物動態学的な因子を検討するための前向きな探索的臨床研究を遂行した。現在までに36症例登録し、レンバチニブによる治療を行った。 金沢大学の加藤将夫教授の研究室において、液体クロマトグラフ-三連四重極型質量分析計(LC-MS/MS)を用いた血漿中濃度の測定法を確立し、3症例について予備的に測定した。また、これらの患者の血漿検体について、平衡透析法を用いて遊離形分率を算出した。LC-MS/MSにて測定した総血漿中濃度に遊離形分率を掛けて、遊離形濃度を算出した。本研究費にて使用ライセンス契約をしたWinNonlinのノンコンパートメントモデルを用いて、総血漿中濃度基準のAUCや遊離形血漿中濃度基準のAUCなどの、薬物動態学的パラメータを予備的に算出した。 また金沢大学において、液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計(LC-TOFMS)を用い、16症例の血漿検体を移動相・カラム・極性が異なる複数の測定条件下で分析し、網羅的に低分子化合物を検出した。レンバチニブ投与開始前と開始後15日目における同一患者の血漿メタボロミクスを比較した結果、有意に(p<0.05)シグナル強度が増加した化合物群として、長鎖アシルカルニチン(C12, C14, C16およびC18)が見出された。 27症例について、治療中に発生した副作用のデータ、腫瘍縮小や延命などの治療効果に関するデータを集積した。 全血検体からゲノムDNAを抽出し、レンバチニブの代謝に関与するCYP3A5、輸送に関与するABCB1、ABCG2、及びOATP1B1の代表的な遺伝子多型、CYP3A5*3、ABCB1 1236C > T, 2677G > T、及び3435C > T、ABCG2 421C>A、OATP1B1 521T>Cの解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レンバチニブを投与する切除不能進行・再発肝細胞がん患者を対象とした前向きな臨床研究は、目標症例数を40例としている。これまでに、36症例までエントリーすることができた。体内動態解析の方法を確立して予備的な検討を開始した。16症例について、血漿メタボロミクス解析を実施した。また27例について、レンバチニブの治療効果や副作用データを収集した。薬物動態関連因子の遺伝子多型についても解析を開始した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も今年度に引き続き、前向きな臨床試験への患者のエントリーを継続する。これまでにレンバチニブによる治療を開始したすべての患者について、体内動態、血漿メタボロミクス、遺伝子多型を解析する。これらのデータや各患者の血漿中アルブミン濃度、肝機能などと、レンバチニブの治療効果や副作用との関連を調べていく。本研究では、レンバチニブによる治療開始前の患者の尿も採取している。次年度は尿検体を用いたメタボロミクス解析も開始し、体内動態やレンバチニブの薬物応答との関係を調べる。 レンバチニブと代謝物の体内動態に関連する因子を組み込んだPBPKモデルを作成し、これら化合物のヒトにおける体内動態を説明し得るようにパラメータを最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、体内動態解析や薬理遺伝学的解析の準備を整えるところまで研究を進めることができたが、エントリー症例の検体を用いた解析までには至らなかった。次年度は、エントリーしたすべての患者について、研究費を用いて、血漿中濃度測定用カラム、遊離形分率測定用の限外濾過膜、PCR用のDNAポリメラーゼなどを購入し、また外注でのエクソーム解析を行い、総合的に解析を進める予定である。
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