研究課題/領域番号 |
22K06745
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
宮嵜 靖則 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (40551742)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖衣コーティング / 自転公転式調剤ミキサー / 糖衣顆粒剤 / 小児用製剤 |
研究実績の概要 |
市販されている医療用およびOTC医薬品に、糖衣課粒剤はない。糖衣顆粒剤とは、顆粒剤に糖衣を施し、苦味マスキングや遮光などの機能を付与した剤形である。また病院および保険薬局に、顆粒剤に糖衣を施す製剤機器はない。本研究は薬局にある調剤ミキサーを用いて顆粒剤に糖衣を施す手法を開発するとともに、新規な小児用剤形として糖衣顆粒剤を提案するものである。本年度は、五苓散エキス顆粒をモデル製剤として糖衣コーティング法の開発を行った。五苓散は、小児医療において感冒性下痢嘔吐症に用いられるが、漢方薬のにおいや味に嫌悪感を示す小児患者が服用することは困難である。本研究では原料の混合、顆粒の造粒、糖衣コーティングの一連の工程をワンポットで連続的に行うことを目指している。被覆剤は粉末添加し、造粒した際の結合水を利用して糖衣を施すことを着想した。そこで、結合水量を増やし糖衣コーティングに利用可能な水量を確保するために、顆粒の処方にトウモロコシデンプンを添加した。まず五苓散エキス顆粒を粉砕し、トウモロコシデンプンを加え、調剤ミキサー(おくすりmiksi(MW-N300DS-1、㈱ビートセンシング)を用いて処理速度1,200 rpm、処理時間45 sの条件で造粒を行った。次いで、被覆剤として白糖およびタルクの混和物を添加し、処理速度を600 rpm、処理時間を 30秒稼働することにより糖衣コーティングを行った。その結果、トウモロコシデンプン添加量により結合水量および被覆量を制御することができた。得られた糖衣顆粒剤について収率および粒度分布を評価した結果、トウモロコシデンプン添加量を変えて調製した糖衣顆粒の収率は、97.2-98.4%と良好であり、メジアン径1,332―1,951 μm、粒度分布幅0.64―0.84を示した。このようにして糖衣剤を粉末添加するユニークな手法を開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は病院薬局および保険薬局にある自転公転式調剤ミキサーを用いて顆粒剤に機能性コーティングを施す手法を開発するとともに、新規な小児用剤形として機能性コーティング顆粒剤を提案することを目的としている。 初年度は自転公転式調剤ミキサーを用いて、ワンポットで、原料粉末の混和、顆粒の造粒、糖衣コーティングを行う方法を開発した。それぞれの工程に要する時間は、数十秒から数分であり、1から5日かかるとされていた従来の糖衣コーティングの常識から大きく短縮された。その大きな要因は、糖衣コーティングを行う際に水溶液を加えないソルベントレス法で行ったことがある。そこには造粒に用いた結合水を利用するというブレイクスルーがあった。コア顆粒としては、錠剤粉砕物やカプセル内容物を考えているが、本年度は五苓散エキス顆粒を粉砕して用いた。カロナール錠についても行っており、他剤への応用は可能であると考えている。 以上のように、当初掲げた(1) 造粒および乾燥工程における添加水の挙動の解明、(2) 糖衣コーティング膜の形成機構の解明、(3) 機能性コーティング顆粒剤の調製方法の確立のうち、(3)について順調に進行してきた。現在、(1)に向け検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究を基礎として、自転公転式ミキサーを用いた機能性コーティング顆粒剤の開発に取り組む。 まず、糖衣顆粒剤の調製方法をブラッシュアップする。即ち、被覆剤の組成の検討、調剤ミキサーの装置パラメータの検討を行う。またそれらの処方因子および工程因子が顆粒剤の機能性に及ぼす影響を精査する。機能性評価としては苦味マスキング性、遮光性、防湿性を考えている。 次いで、基本となる工程を決定後、造粒および乾燥工程における添加水の挙動の解明を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
117円と少額であったことから、端数として残った。次年度に消耗品として使用したい。
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