研究課題/領域番号 |
22K06748
|
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
上田 秀雄 城西大学, 薬学部, 教授 (50326998)
|
研究分担者 |
木村 聡一郎 城西大学, 薬学部, 准教授 (30433650)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 超音波 / ovalbumin / ランゲルハンス細胞 |
研究実績の概要 |
2022年度は、C57BL/6系マウスにモデル抗原としてovalbumin(OVA)溶液を皮膚表面に適用し、超音波照射により抗原を皮内送達したときの抗体産生の特徴づけについて検討した。 まず、これまで検討してきたOVA皮内(i.d.)投与条件は2 gに設定しており、20 kHz, 0.41 W/cm2超音波(US)を10 分間照射したときに、同量のOVAを皮内送達可能なOVA溶液の適用濃度を検討した。その結果、0.2 mg/mL OVA溶液を用いることとした。 0.2 mg/mL OVA溶液を皮膚表面に適用し、上記と同様のUS条件でOVAを皮内送達し、これを7日間隔で8回繰り返したときの抗OVA-IgG抗体の産生を確認した。コンロトールではOVA 2 µgをi.d.投与し、ポジティブコンロトールとしてOVA 2 µgにアジュバントとしてALUMを混合してi.d.投与した。これら比較対象群の処置も7日間隔で8回繰り返した。その結果、血漿中抗OVA-IgG抗体量を比較すると、初回免疫から4週間後までは3群間で差は認められなかったが、8週間後のUS適用群はコントロール群より2.9倍高く、またポジティブコントロール群より2.2倍高かった。アレルギー反応の観点から、同時にIgE抗体産生量を測定した結果、すべての条件で期間の経過とともに血漿中IgE抗体量は上昇し、8週目では同等の値を示した。 2022年度の検討より、C57BL/6系マウスにおいて超音波照射により抗原を皮内送達したときも抗体産生が誘導され、その効果はアジュバントと併用したi.d.投与群よりも高く、また、アレルギー反応のリスクは同等であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度から予定している抗体産生と免疫応答との関連付けを詳細に検討する上で、超音波条件を絞っていく必要がある。2022年度の検討で、最も高い経皮吸収促進効果を期待できる20 kHz超音波を利用することでi.d.投与と同条件の抗原送達をコントロールでき、そのときのIg G抗体産生やランゲルハンス細胞の活性化を評価できた。このことは、超音波条件を整理していく中で非常に重要な知見が得られたと考えている。2022年度の研究計画に含まれていたFITCラベル化OVAを用い、超音波処理後のランゲルハンス細胞による抗原捕食を定量的に評価することについては現在進行中であり、この評価が終了すると20 kHz, 0.41 W/cm2超音波(US)を10 分間照射したときの特徴づけは完了すると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度の結果を受けて、今後の研究計画は当初の予定通り進めていきたいと考えている。超音波による免疫応答活性化機構に関連する検討は、2022年度に30~40%程度の進捗状況であり、2023年度の検討を含めてより詳細に特徴づけていく。 超音波条件を変更した時の抗体産生やその表皮免疫応答に対する影響を明らかにすることも大変興味深い。しかし、これまでに用いてきた20 kHzよりも高周波数の条件、または 0.41 W/cm2よりも低強度の超音波条件では、抗原の皮内送達は減少し、この場合皮内免疫応答は低下すると予想される。また、強度を上げた場合は皮膚への傷害性を増大すると考えられ、現実的ではない。そのため、超音波条件を20 kHz, 0.41 W/cm2に絞り、詳細な機構解明や安全性について明らかにしていきたいと考えている。
|