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2022 年度 実施状況報告書

GGCTとxCTのダブル阻害によりフェロトーシスを増強する全く新しいがん治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 22K06756
研究機関京都薬科大学

研究代表者

飯居 宏美  京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00597768)

研究分担者 中田 晋  京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードフェロトーシス / GGCT / xCT阻害剤
研究実績の概要

初年度は、GGCT阻害剤pro-GAとxCT阻害剤の併用によるがん細胞に対するフェロトーシス細胞死誘導増強の実証を目的に研究を進めた。
まず、GGCT遺伝子増幅とxCTの高発現が報告されている膠芽腫に着目し、4種類のヒト膠芽腫細胞株A172、U87MG、U251、T98細胞に、独自のGGCT阻害剤pro-GAを作用させ、増殖抑制効果を検討した。また、それぞれの細胞株におけるGGCTの発現量を比較したところ、いずれの細胞においてもヒトの正常アストロサイト細胞に比しGGCTの高い発現とpro-GAによる増殖抑制効果が見られた。また、マウス膠芽腫モデルから樹立した3種類の膠芽腫幹細胞株におけるGGCT発現量とpro-GA処理による増殖抑制効果も検討した。いずれの細胞でも同様に、GGCTの高発現とpro-GA処理による増殖抑制効果が見られた。さらに、その中でもGGCTの発現とpro-GAによる細胞増殖抑制効果が高いマウス膠芽腫幹細胞とU87MG細胞にpro-GAとxCT阻害剤であるerastinを処理し増殖抑制効果を検討したところ、統計学的有意な相乗効果を確認した。また、それらの増殖抑制効果はフェロトーシス阻害剤であるFerrostatinにより有意に回復した。そこで、さらに、pro-GAによりフェロトーシスが誘起されるか、またerastinとの併用でフェロトーシスが増強されるかについて、酸化型多価不飽和脂肪酸の生成について、フローサイトメトリー法を用いて解析したところ、proGAとerastin処理により有意に酸化型多価不飽和脂肪酸が増加し、2剤の併用によりさらなる増加が確認された。以上の実験結果を通して、pro-GAによる細胞死とerastinによる細胞死機構には、フェロトーシス細胞死の誘導が関与しているという、本研究課題における仮説について検証し、意義深い結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス膠芽腫幹細胞においてpro-GAによる細胞死とerastinによる細胞死機構には、フェロトーシス細胞死の誘導が関与しているという、本研究課題における仮説の実証を裏付ける結果を得られた。

今後の研究の推進方策

Pro-GAとerastinの併用による細胞増殖抑制効果に対する相乗効果とフェロトーシス細胞死の誘導が確認できたので、フェロトーシス細胞死阻害剤であるferrostatin前処理により、酸化型多価不飽和脂肪酸の変動が抑制されるのかについて、フローサイトメトリー法で検討する。また、さらなるフェロトーシス誘導メカニズムの解明を行うため、細胞内システインの減少が、pro-GA単剤もしくはerastinとの併用で惹起されるかについて、質量分析器と用いた解析を行う。動物実験では条件検討のための実験として、ルシフェラーゼを人工的に発現させたU87MG細胞を免疫不全マウスの大脳実質内に移植した同所性移植モデルに、pro-GAを投薬し抗腫瘍効果を確認している。次にxCT阻害剤との併用効果を実証することを目指し、動物実験で使用実績が報告されているerastinまたはsulfasalazineの投薬による抗腫瘍効果について条件検討し、pro-GAとの併用でその抗腫瘍効果の増強が見られるかの検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

試薬購入の際、端数が生じたため。
研究計画は変更することがなく進めるので、当初予定の研究総額を使用する予定である。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (20件)

  • [雑誌論文] Myb Repression Mediates Stat5b-knockdown-induced Apoptosis and Inhibits Proliferation of Glioblastoma Stem Cells2023

    • 著者名/発表者名
      MOYAMA CHIAMI、FUJITA MITSUGU、OKAMOTO HITOSHI、II HIROMI、NAKATA SUSUMU
    • 雑誌名

      Cancer Genomics - Proteomics

      巻: 20 ページ: 195~202

    • DOI

      10.21873/cgp.20374

  • [雑誌論文] JCI?20679 suppresses the proliferation of glioblastoma stem cells by activating AMPK and decreasing NFATc2 expression levels2022

    • 著者名/発表者名
      Ando Shota、Kojima Naoto、Moyama Chiami、Fujita Mitsugu、Ohta Kaito、Ii Hiromi、Nakata Susumu
    • 雑誌名

      Molecular Medicine Reports

      巻: 26 ページ: 238

    • DOI

      10.3892/mmr.2022.12754

  • [雑誌論文] The γ-Glutamylcyclotransferase Inhibitor Pro-GA Induces an Antiproliferative Effect Through the Generation of Mitochondrial Reactive Oxygen Species2022

    • 著者名/発表者名
      II HIROMI、TANIGUCHI KEIKO、YOSHIYA TAKU、NOHARA YUKIE、KAGEYAMA SUSUMU、KAWAUCHI AKIHIRO、NAKATA SUSUMU
    • 雑誌名

      Anticancer Research

      巻: 42 ページ: 4311~4317

    • DOI

      10.21873/anticanres.15931

  • [学会発表] 膠芽腫幹細胞ではJCI-20679処理によりAMPKの活性化とNFATc2の発現低下が引き起こされる.2022

    • 著者名/発表者名
      安藤翔太, 小島直人, 茂山千愛美, 藤田 貢, 飯居宏美, 中田 晋
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 膠芽腫幹細胞におけるStat5bの阻害はCyclin E2とMybの発現抑制を誘導する2022

    • 著者名/発表者名
      茂山千愛美, 藤田 貢, 安藤翔太, 岡本仁志, 飯居宏美, 中田 晋
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] γ-Glutamylcyclotransferase発現抑制は大腸がん細胞において細胞増殖を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      飯居宏美, 伊藤公成, 中田晋.
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 膠芽腫幹細胞におけるStat5b阻害による細胞増殖抑制にはCyclin E2及びMybの発現抑制が関与する2022

    • 著者名/発表者名
      茂山千愛美, 藤田 貢, 安藤翔太, 飯居宏美, 中田 晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] ヒト膠芽腫U87MG細胞に対するGGCT阻害剤pro-GAとxCT阻害剤エラスチンの併用効果2022

    • 著者名/発表者名
      隈元春奈, 櫻井夏奈, 野瀬梢, 茂山千愛美, 安藤翔太, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] 膠芽腫幹細胞モデルにおけるGGCTおよびヘッジホッグ経路リガンドの発現制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      山向千晶, 松下眞子, 橋本彩花, 野瀬梢, 茂山千愛美, 安藤翔太, 藤田貢, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] GGCTノックダウンはDhh発現低下を介してマウス膠芽腫幹細胞の増殖を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      森昌也, 吉田百花, 野瀬梢, 茂山千愛美, 安藤翔太, 藤田貢, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] GGCTノックダウンによる脳腫瘍幹細胞の増殖抑制機構とその抗腫瘍効果2022

    • 著者名/発表者名
      椎達哉, 野瀬梢, 茂山千愛美, 安藤翔太, 藤田貢, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] 新規PHB2阻害剤によるp21Waf1/Cip1誘導を介したMCF7乳がん細胞の増殖抑制効果2022

    • 著者名/発表者名
      土持歩夢, 吉井陸, 金田裕太, 松本流風, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] ヒト大腸がんHCT116細胞におけるGGCTノックダウンによる増殖抑制機構.2022

    • 著者名/発表者名
      木下晴菜, 近藤真帆, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      第72回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] 大腸がん細胞におけるGGCT発現抑制は抗腫瘍効果を示す2022

    • 著者名/発表者名
      飯居宏美, 木下晴奈, 近藤真帆, 中田晋
    • 学会等名
      第60回日本癌治療学会学術集会
  • [学会発表] γ-グルタミルトランスフェラーゼ阻害剤によるMCF7乳がん細胞の増殖抑制効果に対するミトコンドリアROS産生の寄与2022

    • 著者名/発表者名
      飯居宏美, 野瀬梢, 茂山千愛美, 安藤翔太, 中田晋
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] 膠芽腫幹細胞におけるγ-glutamylcyclotransferase (GGCT)ノックダウンによる増殖抑制メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      野瀬梢, 茂山千愛美, 飯居宏美, 森昌也, 亀井美保, 椎達哉, 吉田百花, 大草由佳子, 南京香, 安藤翔太, 中田晋
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] sh-p53, EGFRvIII, NRasG12V導入による膠芽腫幹細胞モデルを用いた GGCTおよびヘッジホッグ経路リガンド発現制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      山本夏菜, 山向千晶, 松下眞子, 橋本彩花, 野瀬梢, 茂山千愛美, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] GGCTノックダウンによるマウス膠芽腫幹細胞の増殖抑制に対するDhhの関与2022

    • 著者名/発表者名
      森昌也, 吉田百花, 茂山千愛美, 安藤翔太, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] 新規PHB2阻害剤によるp211Waf1/Cip1誘導を介したがん細胞の増殖抑制効果2022

    • 著者名/発表者名
      土持歩夢, 吉井陸, 金田裕太, 松本流風, 茂山千愛美, 飯居宏美, 中田晋
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] シクロペンタン環により配座を固定したアセトゲニンチオフェン誘導体の合成とその作用機序の解明研究2022

    • 著者名/発表者名
      細見 紘幸, 小柴 佐和子, 松本 卓也, 安藤 翔太, 茂山 千愛美, 飯居 宏美, 中田 晋, 岩﨑 宏樹, 山下 正行, 南部 寿則, 小島 直人
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] アセトゲニンチオフェン誘導体のTHF環部分をトリエチレングリコールに置換した新規誘導体の合成とその抗腫瘍効果評価2022

    • 著者名/発表者名
      大田 海斗, 藤井 真人, 茂山 千愛美, 飯居 宏美, 中田 晋, 岩﨑 宏樹, 山下 正行, 南部 寿則, 小島 直人
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] 化学発光団 BDU を用いたがん関連 GGCT プローブ“LISA-103”の開発2022

    • 著者名/発表者名
      野原 由江, 谷口 恵香, 飯居 宏美, 増田 駿, 河上 紘子, 松本 正勝, 中田 晋, 酒井 敏行, 吉矢 拓
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] エチレングリコール単位を含むアルキル基を側鎖に持つチオフェンカルボキサミド誘導体の合成と膠芽腫幹細胞に対する増殖抑制活性2022

    • 著者名/発表者名
      髙橋 達哉, 大田 海斗, 竜石 侑璃, 安藤 翔太, 茂山 千愛美, 飯居 宏美, 中田 晋, 岩﨑 宏樹, 山下 正行, 南部 寿則, 小島 直人
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会

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公開日: 2023-12-25  

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