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2023 年度 実施状況報告書

抗がん効果と上皮間葉転換の比較を基軸としたがん悪性化機構の解明とその応用展開

研究課題

研究課題/領域番号 22K06766
研究機関広島大学

研究代表者

川見 昌史  広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20725775)

研究分担者 高野 幹久  安田女子大学, 薬学部, 教授 (20211336)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード上皮間葉転換 / 抗がん剤 / がん悪性化 / バイオインフォマティクス / 網羅的定量プロテオミクス
研究実績の概要

上皮間葉転換(EMT)は、上皮様から間葉への細胞の形質転換現象である。EMTは胚発生など生命に重要な様々なイベントに関与することが知られているが、組織線維化やがん悪性化など、病態生理学的にも極めて重要であることが明らかになっている。我々は、抗がん剤によってEMTが誘発されることを報告しており、抗がん剤治療中にがん細胞に対して抗がん剤がEMTを誘発することでがん細胞の悪性化が促進される可能性が懸念される。本研究では、抗がん剤によって抗腫瘍効果とは別にEMTの誘発が、癌の悪性化を促すとの仮説を検証し、EMTに特異的な防御標的を見出すことを目的としている。
2023年度は、網羅的定量プロテオミクス技術を用いて、抗がん剤であるブレオマイシン(BLM)、メトトレキサート(MTX)およびアベマシクリブ(ABM)による網羅的なタンパク質発現変動を明らかにした。これまでトランスクリプトームレベルでの実績や報告は存在していたが、タンパク質レベルでの検討は初めてである。その結果、BLMおよびMTXで共通して変動したタンパク質と1.5倍以内で相関しているmRNAは約60%に留まり、タンパク質とmRNA発現変動との間に顕著な乖離があることを証明した。そこで、網羅的なタンパク質発現に基づいてバイオインフォマティクスを用いた解析を行ったところ、BLMとMTXでは老化に関与する因子が、ABMではリソソームの亢進に関与する因子が主に発現増加していることを明らかにした。また、発現が減少した因子については、BLM/MTXおよびABMにおいて概ね抗がん効果に関与する因子が減少していたことから、発現増加を示している因子がEMT、ひいては細胞の形質転換に寄与するものであると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

網羅的定量プロテオミクスを用いることによって、抗がん剤によって変動する因子をタンパク質レベルで明らかにすることができ、EMTを抑制するための直接的な標的候補を得ることができた。最終年度では、EMTを抑制しつつ、抗がん効果は妨害しない標的の同定を行っていく予定であり、そのための準備段階は整った。

今後の研究の推進方策

BLMやMTXによって発現が上昇していたPAI-1、あるいはABMによって発現が上昇していたリソソーム内分解酵素などの候補に対する阻害実験を行い、EMTを抑制しつつ、抗がん効果は妨害しない標的の同定を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

2023年度は網羅的発現情報の取得とその解析を計画していたが、網羅的解析の手法を当初の分取→RNAseqから、網羅的定量プロテオミクスに変更した。研究室で専有するLC-MS/MSを用いることができたため、当初の外注費用と比べて費用を軽減することができた。その分、想定よりも多くの標的候補を得たため、次年度使用額はそれら標的の検証に使用していく予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] SWATH-MS法を利用した金属輸送体の機能解析2024

    • 著者名/発表者名
      赤井 美月、川見 昌史、内田 康雄
    • 雑誌名

      生体の科学

      巻: 75 ページ: 116~121

    • DOI

      10.11477/mf.2425201831

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 血液クモ膜関門:血液脳関門とは異なる輸送分子機構をもつ新たな中枢関門2024

    • 著者名/発表者名
      Maeda Yuki、Kawami Masashi、Uchida Yasuo
    • 雑誌名

      MEMBRANE

      巻: 49 ページ: 99~106

    • DOI

      10.5360/membrane.49.99

    • 査読あり
  • [学会発表] 多階層オミクスデータを用いた 薬物による肺毒性機構の解明2024

    • 著者名/発表者名
      赤井 美月、川見 昌史、湯元 良子、高野 幹久、内田 康雄
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 上皮間葉転換誘発過程における細胞形質に及ぼす抗がん剤の影響解析2023

    • 著者名/発表者名
      高橋諒、湯元良子、川見昌史、高野幹久
    • 学会等名
      日本薬剤学会第38年会
  • [学会発表] 網羅的なトランスクリプトーム解析を基盤とした薬物誘発性上皮間葉転換機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      川見昌史、湯元良子、高野幹久
    • 学会等名
      日本薬剤学会第38年会
  • [学会発表] Association of epithelial-mesenchymal transition with cell cycle arrest, induced by Abemaciclib2023

    • 著者名/発表者名
      吉盛智世、湯元良子、川見昌史、高野幹久
    • 学会等名
      第50回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] Study on microRNA associated with epithelial-mesenchymal transition in drug-induced lung injury2023

    • 著者名/発表者名
      川見昌史、赤井美月、湯元良子、高野幹久
    • 学会等名
      第50回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] 肺胞上皮における アベマシクリブ誘発性上皮間葉転換機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      吉盛 智世,川見 昌史,熊谷 雄太,湯元 良子 ,高野 幹久,内田 康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 非小細胞肺がんにおける上皮および間葉形質に及ぼす 抗がん剤の影響解析2023

    • 著者名/発表者名
      高橋 諒,川見 昌史,湯元 良子,高野 幹久,内田 康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] A549細胞におけるドキソルビシンによるEMT誘発と 抗がん効果の関連解析2023

    • 著者名/発表者名
      藤本 宇宙, 川見 昌史, 湯元 良子, 高野 幹久, 内田 康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 乳がん細胞におけるRibavirinの抗腫瘍効果に対する耐性化機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      福島愛梨、川見昌史、杉元勇毅、湯元良子、高野幹久、内田康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 非小細胞肺がんにおけるmiR-34a誘発性上皮間葉転換におけるp53の役割解析2023

    • 著者名/発表者名
      赤井 美月,川見 昌史,波内 宏斗,湯元 良子,高野 幹久, 山本 佑樹,高橋 陵宇,田原 栄俊,内田 康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] RNA-seq解析を用いた薬物誘発性EMTに関与するmiRNAの新規同定手法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      前田祐希、川見 昌史,湯元 良子,高野 幹久,内田 康雄
    • 学会等名
      フォーラム2023 衛生薬学・環境トキシコロジー

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公開日: 2024-12-25  

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